白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
私は2009年3月に弘前大学を定年退職し,2012年の秋まで弘前の自宅におりましたが,公務から解放された退職直後の3年半,気の向くままに世界自然遺産に指定されている白神山地に出かけてはそこに息づいている動物たちの写真や動画を撮り溜めていました.
気に入った写真を私のブログ「白神動物日記」に載せて紹介したりしていたのですが,30枚ほどの写真を紹介し終えた2012年9月に仙台市へ転居することになってしまいました.学生時代も含め40年以上住み慣れ,第2の故郷でもあった津軽から離れてしまったことも遠因となり,ブログでの白神の動物紹介からも遠ざかってしまいました.
3年ほど前,福岡県の久留米市に再転居し,現在は後期高齢者ながら九州筑後の人として息災に過ごしています.退職後10年を経て,かの“津軽の里”や“白神山地”への想いがつのり,私が白神山地で撮りためた写真や動画が数多くCPファイルの中で眠っているままであることに気づきました.
公開して自慢できるほどの写真・画像ではありませんが,私の教え子である東邦大学教授の多田政子さんのつよい勧めと協力があり,この際,私のホームページを立ち上げ,白神山地を駆け巡って動物たちを見つめてきた活動の証を記録画像として残しておくことにしました.(2020年5月25日)
Photos
ニホンザルのペア 〜 至福のひと時?
白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
2011年7月23日 白神山地大川源流部の“タカヘグリ”まで渓流を探訪する機会に恵まれ,白神の渓流遡行を体験しました.渓流の両岸に屹立する岩壁に圧倒されました.感動!岩肌には無数のダイモンジソウがへばりつくように息づいており,ツガルミセバヤにもはじめて出会い,渓流を泳ぐカジカガエルやアズマヒキガエルなど,いい出会いが沢山ありました。
2010年10月6日 弘前大学白神自然観察園の近くの林縁でグルーミング中のニホンザルのペアに出逢いました.暖かな陽だまりの中で,横になってまどろみながらグルーミングしてもらっているボスザルの姿は微笑ましく,まさに至福のひと時を楽しんでいるようでした.
ニホンザル社会
ニホンカナヘビの日向ぼっこ
ボスざる: ついでに背中の方もやってもらおうか,なんだかムズムズするんや・・・.
メスざる: えーよ.あらあらこんなにいっぱい毛ジラミが・・・!
2011年6月25日 暗門川の支流の一つである大川沿いの川原で日向ぼっこをしているニホンカナヘビに遭遇しました.陽だまりの岩にへばりついてからだを温めているようで,じっとしていてしばらく動くこともなく,おかげで良いシャッターチャンスに恵まれました.ニホンカナヘビは日本固有種で成体は25cmくらいにもなり.からだの3分の2以上を占めるほどの長い尾を有しています.敵に攻撃されるとトカゲと同じように簡単に尾を自切し,ピクピク動く尾の切れ端を残し,すたこらさっさと逃げのびます.再生力が強く切れた部分は容易に再生するようで,再生中の個体に出くわすこともあります.
しばらくしてもう一度振り返ってみたら、今度はボスザルがグルーミングのお返しをしているようで,サルの世界にもこのようなお互いを慈しむ心があるんだなーと、ほのぼのとした気持ちでシャッターを押しました.
産卵直前のニホンカナヘビ
白神で出会った生物をもっともっと
ご紹介します
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小川のせせらぎもお楽しみ下さい
先に紹介したニホンカナヘビの撮影日から1週間ほど後(7月2日)もう一度大川の同じポイントへ行ったら、今度はお腹の大きな産卵直前のニホンカナヘビに出会いました。初夏から夏季にかけて交尾し,1ヶ月ぐらいで産卵するといわれています.写真をズームアップして見ると・・・、身重なのにどうやら脱皮がはじまっているようです。先に紹介したカナヘビは“彼女のお相手だったのかな?”なんて想像するのも楽しいですね。無事産卵し元気な子が孵化しますように!