白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった昆虫たち ③
トンボ類
渓流の畔で初秋を謳歌するアジアイトトンボ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2011年9月10日 アジアイトトンボ 大沢川の渓流沿いで.
白神山地の大沢川沿いの湿地で,ラッキーにもオス(写真左)とメス(写真右)のアジアイトトンボに出あいました.腹部末端の第9・10節に青いリングの紋様が入るのがオス,この青いリングがないのがメスです.体長3 cm 弱ぐらいのイトトンボの仲間で,青森県では平地の池や沼・遊水池などのほとりの草地でふつうにみられるアジアイトトンボですが,白神山地でも沼地や湿原などには結構いるようです.
2011年7月31日 イトトンボのヤゴ 広泰寺池にて.
大沢川沿いの湿地で産卵中のオゼイトトンボ
2009年7月5日 オゼイトトンボ 大沢林道沿いの湿地にて.
オゼイトトンボのペアが湿地の植物につかまって産卵しているシーンにでくわしました.先にアジアイトトンボを紹介しましたが,アジアイトトンボと違い,オスは第8・9節が青い色をしています.上がオスで,翅をはばたかせながら腹部末端の捕捉器でメスの首根っこを挟み,メスが産卵しやすいように押さえているのでしょうか?メスは尾を水中に入れ水草の茎に卵を生みつけるようです.雄雌で力をあわせ世代をつなぐ生命の営みは神々しくもあり,思わず“けっぱれ! Good luck!”と声をかけてしまいました.
ニホンカワトンボ
2011年7月21日 二ホンカワトンボ(無色翅型)♀ 広泰寺池のほとりで.
イトトンボの仲間に似た細長いスマートな体型のトンボで,オスの翅に3タイプ(橙色翅・薄橙色翅・無色翅),メスに2タイプ(薄橙色翅・無色翅)があります.一般に水のきれいな,緩やかな流れの清流に生息するのだそうですが,白神では湖沼の周りにもいるようです.
ニホンカワトンボ4景
ヨツボシトンボ
写真左; 2009年6月27日 二ホンカワトンボ(♂)無色翅型 広泰寺池のほとりにて.
写真右; 2009年6月27日 二ホンカワトンボ(♂)淡橙色翅型 広泰寺池のほとりにて.
写真左 2009年7月2日 二ホンカワトンボ(♀)無色翅型 広泰寺池のほとりにて.
写真右 2009年6月27日 二ホンカワトンボ(♂)無色翅型 広泰寺池のほとりにて.
オニヤンマ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年8月22日 羽化直後のオニヤンマ 広泰寺池近辺にて.
オニヤンマは体長(頭部先端から腹部末端まで)10 cm 前後の日本では最大級のトンボです。大きいトンボですので,目に留まることも多く,水から上がって草の 茎や葉にしがみついているヤゴ(幼虫)の羽化シーンを目にすることもあります。この日朝9時3分,広泰寺池の傍でオオマツヨイグサの萼筒にしがみついている羽化直後のオニヤンマに出あいました。写真では前翅・後翅がないように見えますが,これは翅欠損個体ということではありません。胸部背面の辺りに何やら 半透明のちぢれたような小さな膜状のものがついているのが見えますので,これから展翅が始まるところのようです。しばらくするとぴんと張った翅となり羽ばたきを始めるでしょう.
ヨツボシトンボ
2009年7月5日 ヨツボシトンボ 大沢林道沿い湿地にて.
腹部が太く,重量感のあるがっしりした感じのトンボです.体全体が黄褐色で,翅の前縁部に黒褐色の斑紋があります. 渓流沿いの池や湿原でよく目にします.
シオヤトンボとマユタテアカネ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2009年7月5日 シオヤトンボ 大沢林道沿いの湿地にて.
シオヤトンボはシオカラトンボによく似ていますが,腹部が末節手前まで白く,シオカラトンボは腹部の半分くらいが黒っぽいので,容易に識別できます.
写真右 2009年8月19日 マユタテアカネ(♂) 秋田県八峰町にて.
顔の中央あたりについている眉のような黒い縦長の斑紋(眉斑)がこのトンボの特徴ですが,顔が見えないアングルなので確認できませんでした.もう一つのわかりやすい特徴“胸部背面の翅のつけ根のあたりが赤い”ことからマユタテアカネのオスかもしれません.
マユタテアカネとナツアカネ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2010年7月25日 マユタテアカネ(未成熟♂) 白神自然観察園にて.
写真右 2010年8月22日 ナツアカネ 白神自然観察園にて.
どちらも全国的に広く分布するごく普通の“赤トンボ”の仲間です.アキアカネは黄土色っぽい体色で,夏に高地へ移動しいったん姿を消し,秋になって赤みを増し戻ってくると言います.ナツアカネは夏でも腹部背面・肩・顔面まで赤いのだそうです.
ノシメトンボとサナエトンボ科の一種
写真左 2009年8月19日 ノシメトンボ 秋田県八峰町にて.
写真右 2010年5月17日 サナエトンボ科の仲間 白神自然観察園にて.
青森県トンボ研究会会長の奈良岡弘治さんによると,写真左はノシメトンボ♂,写真右はサナエトンボの仲間のようだが,胸部側面の紋様がみえないので,種名はわからないとのことです.
ルリボシヤンマ
2009年8月30日 産卵中のルリボシヤンマ 広泰寺池にて.
ルリボシヤンマの産卵はオゼイトトンボのところで紹介したようなオスとメスが相協力する産卵ではなく,写真のようにメス単独で,池や沼などの岸辺の枯れ草などに産卵管を刺して行なう.
2010年7月25日 ルリボシヤンマの羽化殻(左)とヤゴ(右) 広泰寺池のほとりにて.
ルリボシヤンマのヤゴが広泰寺池のほとりのヤマモミジの幼木に登ってきて羽化し,その羽化殻が見てくれと言わんばかりのポーズでぶら下がっていました.写真右はルリボシヤンマの終齢幼虫.
トンボ目のヤゴ
2009年6月27日 トンボ目のヤゴ 広泰寺池にて.
写真右のヤゴはタカネトンボのヤゴかなと思ったのですが,奈良岡弘治さんによると,トンボのヤゴは終齢幼虫にならないと同定は難しいとのことでした.
ザトウムシの仲間
ザトウムシはザトウムシ目に属する節足動物の総称で,一見クモ類に似ていますが,クモの仲間ではありません.豆粒に細くて長い針金の脚をつけたような特異的な姿をしているので,この仲間であることは容易に分かりますが,その分類は難しいところがあり,ザトウムシ専門の研究者でないと種名まではわからないことが多いのです.多くは森林に棲み,低木や草の上や岩陰などで生活するようです.
ヒラスベザトウムシないしはタマヒゲザトウムシ
2011年8月6日 ヒラスベザトウムシないしはタマヒゲザトウムシ 白神自然観察園にて.
背面中央に並んでいる黒い紋様からイラカザトウムシかと思いましたが,よくわからないのでザトウムシ研究の第一人者である鳥取大学の鶴崎展巨先生に見てもらったところ,ヒラスベザトウムシかタマヒゲザトウムシのどちらかであるとのことでした.この2種の雌は互いに酷似していて,実体顕微鏡下で触肢を持ち上げて初めて見える上唇の形を見ないと識別できないのだそうです.
オオナミザトウムシ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2011年10月9日 オオナミザトウムシ(♂) 大川渓流の河原にて.
このザトウムシも鶴崎先生に同定していただきました.林床で針金のような細長い脚でゆっくり揺れるように歩く姿につい引き込まれてしまいます.脚の長さも含め大人の手のひらよりも大きいくらいです.林の中で生活し昆虫やミミズなどを捕食するらしい.
マガリケムシヒキ
2009年6月27日 マガリケムシヒキ(♂) 白神自然観察園にて.
北海道から九州まで山野に広く分布するムシヒキアブの仲間.この仲間のオスの脚はその脛節(ヒトで言えば脛に相当)が黄色であることから,写真の個体はオスであると判定.
ガガンボを捕食中のマガリケムシヒキ(♀)
2010年7月9日 マガリケムシヒキ 砂川学習館(旧砂川小学校)裏山にて.
たまたまガガンボを捕食中のマガリケムシヒキ(♀)に出会いました(写真左).ムシの世界ながら,めったに遭遇できない弱肉強食のシーンでしたので,写真に収めておくことにしました.インターネットによると,このムシヒキアブの成虫はガガンボやハナアブなどの昆虫を捕らえて体液を吸うのだそうです.この写真はまさにそのシーンをとらえたものでした.参考までに仙台市大年寺山で同じようなシーンを撮っていましたので参考までにあげておきます(写真右 2014年6月1日).
ゴキブリの一種の幼虫
2009年8月19日 ゴキブリの一種の幼虫 秋田県八峰町にて.
翅のない小さなゴキブリを見つけたので写真を撮りました.珍しい種類かと思い青森県立郷土館の山内智さんに画像を見てもらったところ,幼虫の段階での種類特定は難しいということで,ゴキブリの仲間として載せました.
カクツツトビケラ
2011年6月5日 カクツツトビケラの幼虫 大川渓流岸辺にて.
トビケラはカゲロウや蝶・蛾に近い仲間で,幼虫は渓流などのきれいな河川に棲んでいます.カクツツトビケラの幼虫は四角形に切りとった水底の枯葉で四角柱の巣を作り,その筒先から頭と脚をだして活発に動き回ります.その様子を動画に撮りましたので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
トビケラの仲間
2009年5月19日 トビケラ目の幼虫 秋田県八峰町にて.
旧岩舘小学校そばの沢筋で弘前大学の石田幸子教
授のお手伝いでプラナリア採集をしている時,水中
の石を持ち上げて見つけたもので,幼虫が身にまと
っている筒状の巣を除いたところです.山内 智さんに写真を見てもらったのですが,脚や鰓の状態が見
えないので,種の同定は無理のようです.
ナガメ
2010年5月29日 ナガメ 秋田県藤里町横倉にて.
平地から山地にかけての草地に生息するカメムシの仲間で,黒地に橙色の線状紋様が独特の雰囲気をかもし,たちまち脳裏にインプットされます.“菜の花によくつくカメムシ”です.
オオスズメバチ
2010-10-29 オオスズメバチ(♂) 大沢林道沿いで.
頭部が黄橙,胸部が黒,腹部が黄橙と黒が交互に走る縞模様の親指大のハチ.日本のハチの中では最も大きく,かつ最強の毒をもち,攻撃性も高いといいます.とは言え,毒針を持つのはメスで,オスには針がついていないので刺されることはありません.オスであれば手に持っても大丈夫です.ご安心を!ちなみにオスは腹部末節(第7節)が平べったい感じで針がついておらず,メスは腹部末節(第6節)が尖った感じで毒針がついています.
オオスズメバチと蝶の競演3景
アカタテハとオオスズメバチ
シータテハとオオスズメバチ
ルリタテハとオオスズメバチ
2010年10月7日 小春日和にはまだ早い秋中半の穏やかな午後,白神自然観察園の近くの柳(?) の老木に昆虫たちが集まっていました.仲良く樹液をいただいている光景につい引き込まれ,しばらく見とれてしまいました.
マツモムシ
2011年7月31日 マツモムシ 広泰寺池にて.
写真の個体は腹面を上にしているが,これが水中での通常の姿勢のようで,移動の際は背面を下にし背泳ぎ移動すると言われています.英名でbackswimmerといいますが,英名の方がしっくりしますね.水中を自在に早く泳ぐために後脚が極端に長くなり,遊泳脚として機能します.
サワガニ
2010年5月17日 サワガニ 大沢林道にて.
北海道を除き全国に広く分布する日本固有の淡水棲のカニ.水のきれいな渓流や小川に棲むので,水質を調べる指標動物ともなっています.白神山地では,水の流れがある沢筋などではどこでも生息しています.
オナシカワゲラ科の仲間
2010年2月28日 オナシカワゲラ科の1種 大沢川林道にて.
冬に白神の渓流沿いを歩くと,岸辺の雪渓の上を歩いている黒っぽい小さな虫がしばしば目にします.翅のないセッケイカワゲラ,有翅のオナシカワゲラの仲間・クロカワゲラの仲間など種類が多く同定は難しいようです.青森県郷土館元学芸員の山内 智さんによると,写真のカワゲラはオナシカワゲラの仲間のようです.