白神で出あった昆虫たち ③

トンボ類

 

渓流の畔で初秋を謳歌するアジアイトトンボ

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 2011年9月10日 アジアイトトンボ 大沢川の渓流沿いで.

 白神山地の大沢川沿いの湿地で,ラッキーにもオス(写真左)とメス(写真右)のアジアイトトンボにであいました.オスの腹部末端の第9・10節に青いリングの紋様が入り,メスにはこの青いリングがないのですぐわかります.青森県では平地の池や沼・遊水池などのほとりの草地で普通にみられるアジアイトトンボですが,白神山地でも沼地や湿原などには結構いるんですね.体長3cm弱の小型のイトトンボです.

2011年7月31日 イトトンボのヤゴ 広泰寺池にて.

大沢川沿いの湿地で産卵中のオゼイトトンボ

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2009年7月5日 オゼイトトンボ 大沢林道沿いの湿地にて.

 オゼイトトンボのペアが湿地の植物につかまって産卵しているシーンにでくわしました.先にアジアイトトンボを紹介しましたが,アジアイトトンボと違い,オスは第8・9節が青い色をしています.上がオスで,翅をはばたかせながら腹部末端の捕捉器でメスの首根っこを挟み,メスが産卵しやすいように押さえているのでしょうか?メスは尾を水中に入れ水草の茎に卵を生みつけるようです.雄雌で力をあわせ世代をつなぐ生命の営みは神々しくもあり,思わず“けっぱれ! Good luck!”と声をかけてしまいました.

オニヤンマ

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2010年8月22日 羽化直後のオニヤンマ 広泰寺池近辺にて.

 この日朝9時03分,広泰寺池の傍でオオマツヨイグサの萼筒(がくとう)にしがみついている羽化後間もないオニヤンマにであいました.何秒かの間をおいて撮影したもので,左の方が先にとったものです.まだ前翅・後翅が伸び切る前のようですが,うまく翅を展開できない状況のようにみえます.羽化に失敗するということもあると聞きましたが,撮影の時には気がつかなかったので,そのままそこを離れ,その後の顛末はわからずじまいでした.祈無事展翅!

ヨツボシトンボ

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2009年7月5日 ヨツボシトンボ 大沢林道沿い湿地にて.

 腹部が太く,重量感のあるがっしりした感じのトンボです.体全体が黄褐色で,翅の前縁部に黒褐色の斑紋があります. 渓流沿いの池や湿原でよく目にします.

シオヤトンボとマユタテアカネ

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写真左 2009年7月5日 シオヤトンボ 大沢林道沿いの湿地にて.

 シオヤトンボはシオカラトンボによく似ていますが、シオヤトンボは腹部が末節手前まで白く,シオカラトンボは腹部の半分くらいが黒っぽいので,識別できます.

写真右 2009年8月19日 マユタテアカネ(♂) 秋田県八峰町にて.

 顔の中央あたりについている眉のような黒い縦長の斑紋(眉斑)がこのトンボの特徴ですが,顔が見えないアングルなので確認できませんでした.もう一つのわかりやすい特徴“胸部背面の翅のつけ根のあたりが赤い”ことからマユタテアカネと判定できます.

二ホンカワトンボ

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2011年7月21日 二ホンカワトンボ(無色翅型)♀ 広泰寺池のほとりで.

 イトトンボの仲間に似た細長いスマートな体型のトンボで,オスの翅に3タイプ(橙色翅・薄橙色翅・無色翅),メスに2タイプ(薄橙色翅・無色翅)があります.一般に水のきれいな,緩やかな流れの清流に生息するのだそうですが,白神では湖沼の周りにもいるようです.

二ホンカワトンボ4景

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写真左 2009年7月2日 二ホンカワトンボ(♀)無色翅型 広泰寺池のほとりにて.

写真右 2009年6月27日 二ホンカワトンボ(♂)無色翅型 広泰寺池のほとりにて.

ノシメトンボとサナエトンボ科の一種

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写真左 2009年8月19日 ノシメトンボ 秋田県八峰町にて.

写真右 2010年5月17日 サナエトンボ科の仲間 白神自然観察園にて.

 青森県トンボ研究会会長の奈良岡弘治さんによると,写真左はノシメトンボ♂,写真右はサナエトンボの仲間のようだが,胸部側面の紋様がみえないので,種名はわからないとのことです.

ルリボシヤンマ

トンボ目のヤゴ

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2009年6月27日 トンボ目のヤゴ 広泰寺池にて.

 写真右のヤゴはタカネトンボのヤゴかなと思ったのですが,奈良岡弘治さんによると,トンボのヤゴは終齢幼虫にならないと同定は難しいとのことでした.

2009年8月30日 産卵中のルリボシヤンマ 広泰寺池にて2999.JPG

写真左; 2009年6月27日 二ホンカワトンボ(♂)無色翅型 広泰寺池のほとりにて.

写真右; 2009年6月27日 二ホンカワトンボ(♂)淡橙色翅型 広泰寺池のほとりにて.

2009年8月30日 産卵中のルリボシヤンマ 広泰寺池にて.

 ルリボシヤンマの産卵はオゼイトトンボのところで紹介したようなオスとメスが相協力する産卵ではなく,写真のようにメス単独で,池や沼などの岸辺の枯れ草などに産卵管を刺して行なう.

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2010年7月25日 ルリボシヤンマの羽化殻(左)とヤゴ(右) 広泰寺池のほとりにて.

 ルリボシヤンマのヤゴが広泰寺池のほとりのヤマモミジの幼木に登ってきて羽化し,その羽化殻が見てくれと言わんばかりのポーズでぶら下がっていました.写真右はルリボシヤンマの終齢幼虫.

ザトウムシの仲間

 ザトウムシはザトウムシ目に属する節足動物の総称で,一見クモ類に似ていますが,クモの仲間ではありません.豆粒に細くて長い針金の脚をつけたような特異的な姿をしているので,この仲間であることは容易に分かりますが,その分類は難しいところがあり,ザトウムシ専門の研究者でないと種名まではわからないことが多いのです.多くは森林に棲み,低木や草の上や岩陰などで生活するようです.

ヒラスベザトウムシないしはタマヒゲザトウムシ

2011年8月6日 ザトウムシの仲間 観察園にてb.jpg

2011年8月6日 ヒラスベザトウムシないしはタマヒゲザトウムシ 白神自然観察園にて.​

​ 背面中央に並んでいる黒い紋様からイラカザトウムシかと思いましたが,よくわからないのでザトウムシ研究の第一人者である鳥取大学の鶴崎展巨先生に見てもらったところ,ヒラスベザトウムシかタマヒゲザトウムシのどちらかであるとのことでした.この2種の雌は互いに酷似していて,実体顕微鏡下で触肢を持ち上げて初めて見える上唇の形を見ないと識別できないのだそうです.

オオナミザトウムシ

2011年10月9日 オオナミザトウムシ(♂) 大川渓流川原にて.jpg

2011年10月9日 オオナミザトウムシ(♂) 大川渓流の川原にて.

 このザトウムシも鶴崎先生に同定していただきました.林床で針金のような細長い脚でゆっくり揺れるように歩く姿につい引き込まれてしまいます.脚の長さも含め大人の手のひらよりも大きいくらいです.林の中で生活し昆虫やミミズなどを捕食するらしい.

マガリケムシヒキ

2009年6月27日 マガリケムシヒキ(♂) 白神自然観察園にて.

 北海道から九州まで山野に広く分布するムシヒキアブの仲間.この仲間のオスの脚はその脛節(ヒトで言えば脛に相当)が黄色であることから,写真の個体はオスであると判定.

ガガンボを捕食中のマガリケムシヒキ(♀)

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2010年7月9日 マガリケムシヒキ 砂川学習館(旧砂川小学校)裏山にて.

 たまたまガガンボを捕食中のマガリケムシヒキ(♀)に出会いました(写真左).ムシの世界ながら,めったに遭遇できない弱肉強食のシーンでしたので,写真に収めておくことにしました.インターネットによると,このムシヒキアブの成虫はガガンボやハナアブなどの昆虫を捕らえて体液を吸うのだそうです.この写真はまさにそのシーンをとらえたものでした.参考までに仙台市大年寺山で同じようなシーンを撮っていましたので参考までにあげておきます(写真右 2014年6月1日).

ゴキブリの一種の幼虫

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2009年8月19日 ゴキブリの一種の幼虫 秋田県八峰町にて.  

翅のない小さなゴキブリを見つけたので写真を撮りました.珍しい種類かと思い青森県立郷土館の山内智さんに画像を見てもらったところ,幼虫の段階での種類特定は難しいということで,ゴキブリの仲間として載せました.

カクツツトビケラ

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2011年6月5日 カクツツトビケラの幼虫 大川渓流岸辺にて.

 トビケラはカゲロウや蝶・蛾に近い仲間で,幼虫は渓流などのきれいな河川に棲んでいます.カクツツトビケラの幼虫は四角形に切りとった水底の枯葉で四角柱の巣を作り,その筒先から頭と脚をだして活発に動き回ります.その様子を動画に撮りましたので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

トビケラの仲間

2009年5月19日 トビケラ目の幼虫 秋田県八峰町にて.

 旧岩舘小学校そばの沢筋で弘前大学の石田幸子教

授のお手伝いでプラナリア採集をしている時,水中

の石を持ち上げて見つけたもので,幼虫が身にまと

っている筒状の巣を除いたところです.山内 智さんに写真を見てもらったのですが,脚や鰓の状態が見

えないので,種の同定は無理のようです.

ナガメ

2010年5月29日 ナガメ 秋田県藤里町横倉にて.

 平地から山地にかけての草地に生息するカメムシの仲間で,黒地に橙色の線状紋様が独特の雰囲気をかもし,たちまち脳裏にインプットされます.“菜の花によくつくカメムシ”です.

オオスズメバチ

2010-10-29 オオスズメバチ(♂) 大沢林道沿いで.

 頭部が黄橙,胸部が黒,腹部が黄橙と黒が交互に走る縞模様の親指大のハチ.日本のハチの中では最も大きく,かつ最強の毒をもち,攻撃性も高いといいます.とは言え,毒針を持つのはメスで,オスには針がついていないので刺されることはありません.オスであれば手に持っても大丈夫です.ご安心を!ちなみにオスは腹部末節(第7節)が平べったい感じで針がついておらず,メスは腹部末節(第6節)が尖った感じで毒針がついています.

オオスズメバチと蝶の競演3景

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アカタテハとオオスズメバチ

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シータテハとオオスズメバチ

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ルリタテハとオオスズメバチ

2010年10月7日 小春日和にはまだ早い秋中半の穏やかな午後,白神自然観察園の近くの柳(?) の老木に昆虫たちが集まっていました.仲良く樹液をいただいている光景につい引き込まれ,しばらく見とれてしまいました。

マツモムシ

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2011年7月31日 マツモムシ 広泰寺池にて.

 写真の個体は腹面を上にしているが,これが水中での通常の姿勢のようで,移動の際は背面を下にし背泳ぎ移動すると言われています.英名でbackswimmerといいますが,英名の方がしっくりしますね.水中を自在に早く泳ぐために後脚が極端に長くなり,遊泳脚として機能します.

サワガニ

2010年5月17日 サワガニ 大沢林道にて.

 北海道を除き全国に広く分布する日本固有の淡水棲のカニ.水のきれいな渓流や小川に棲むので,水質を調べる指標動物ともなっています.白神山地では,水の流れがある沢筋などではどこでも生息しています.

オナシカワゲラ科の仲間

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2010年2月28日 オナシカワゲラ科の1種 大沢川林道にて.

 冬に白神の渓流沿いを歩くと,岸辺の雪渓の上を歩いている黒っぽい小さな虫がしばしば目にします.翅のないセッケイカワゲラ,有翅のオナシカワゲラの仲間・クロカワゲラの仲間など種類が多く同定は難しいようです.青森県郷土館元学芸員の山内 智さんによると,写真のカワゲラはオナシカワゲラの仲間のようです.