白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル

2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル

2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生

写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.

卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ


2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.


2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.

2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル

2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル

2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.


写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル

2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル

2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生

写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.

卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ


2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.


2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.

2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル

2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル

写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.

2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.

2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.

2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.

2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池

2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.

2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.

2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル

写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.

2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.

2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.

2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.

2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池

2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.

2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.

2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル

2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.


白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった昆虫たち ①
エゾハルゼミの羽化に魅せられる

2010年6月6日 エゾハルゼミ 白神自然観察園にて.
白神山地の初夏,観察園のブナ林でエゾハルゼミの羽化のシーンに巡りあいました.午後9時半頃,夜の帳の中でブナの樹幹にしがみついている幼虫(若虫)がその殻を破って,今まさにその姿を現しつつあるエゾハルゼミ.新しい生命の誕生シーンに感動しつつシャッターを押しました.ハンディカムを持参していなかったのが残念でしたが,感動のワンショットを撮れて心満たされた夜でした.愛しの君,短い夏を心ゆくまで謳歌してネ….

2010年6月6日 エゾハルゼミ(?)の羽化殻 白神自然観察園にて.
エゾゼミ

2010年7月24日 エゾゼミ 大川源流鍋倉森にて.
この日,白神研究会の自然観察会に参加し鍋倉森で真夏を謳歌するエゾゼミにであいました.赤い複眼についつい惹きつけられました.エゾという接頭語がつきますが,北海道から本州・四国・九州まで広く分布しています.クマゼミに近い仲間です.
クサカゲロウの卵・優曇華(うどんげ)の花

2011年8月6日 クサカゲロウの卵 白神自然観察園にて.
夜の帳が下りるころ,観察園のブナ林の中でクサカゲロウの卵に出会いました.1cmほどの長さの髪の毛のように細い糸状の卵柄の先で1mmにも満たない小さな卵がきれいに並んで暗闇の中に浮かび上がっていました.これがいわゆる“優曇華の花”といわれるもので,林の中を歩いていると葉っぱの裏や葉柄に着いているのを見かけることがあります.優曇華の花から孵化した幼虫はアブラムシやカイガラムシ,ハムシなどを食べるようですが,この写真の優曇華は樹幹に着いていて餌になりそうなものがみあたりません.新生の幼虫たちはどうなるのでしょうか・・・.
弘前大学白神自然観察園

2009年6月2日 初夏の観察園 萌黄色につつまれる広葉樹林の散策道を行く.
このホームページでは“白神山地で出あった動物たち”を紹介していますが,その多くは西目屋村の(旧)川原平の奥に位置する弘前大学白神自然観察園をベースにして白神山地を歩き回り撮影したものです.参考のため観察園の一部を紹介しておきます.手前を歩いているのは観察園内に新設された白神自然環境研究所の初代所長佐々木長市教授(農学生命科学部長).
冬虫夏草カメムシタケ初見聞!
2011年8月6日 カメムシタケ 白神自然観察園にて.宿主はツノカメムシの仲間か?
冬虫夏草とは冬に地中で昆虫(セミやカメムシなどの幼虫)やクモなどに子嚢菌類(虫草菌)が寄生し,生きている宿主の体内で菌糸を伸ばして増殖し,夏に虫の殻を破って子実体として生えてくるキノコのことをいいます.この写真は白神自然環境研究所主催の自然観察会“白神ナイトウオーク”で,農学生命科学部の殿内暁夫先生が見つけ,枯れ葉の下にいる宿主のカメムシごとカメムシタケ(子実体)をピックアップし撮ったものです.中国では古来より宮廷料理や薬膳料理に使われ高級食材として親しまれているとか….ですが,どの冬虫夏草でも食べれるということではなく,カメムシタケは“不食”のようです.

2012年8月25日 カメムシタケ 大川支流 河原沢にて.
またしてもカメムシタケに巡り合いました!この日,白神研究会の観察会(講師:牧田 肇先生)があり,やはり殿内暁夫先生が見つけたものです.写真は林床の枯れ葉の陰から先端部(子実体)が見えていたカメムシタケを宿主ごとそっととり出したものです.子実体の先端はオレンジっぽい色ですが,あまり目立たず,林床からちょこっと伸びでているだけなので,経験を積んだ人でなければ見つけるのはとても難しいものです.超ラッキー!!
クロスズメバチの巣穴入り口で “ハチあわせ!”

2010年8月21日 クロスズメバチ 久渡寺にて.
白神山地の東部に位置する久渡寺山の山麓に津軽三十三観音霊場の1つである久渡寺があります.その本堂近くの参道脇の斜面から何やらブーンという羽音が聞こえてきました.スズメバチだったらヤバいと思い,タオルで頬かむりしそっと近づきカメラを向けると,“ぶわーん”とハチの大群が飛び出てきたので,とっさに何枚か連写し早々に退散しました.1枚だけ顔の特徴がはっきり写っている写真があり,クロスズメバチであることがわかりましました.大あごで何かを咥えて飛び出てきたところです(写真下左).クロスズメバチは凶暴なオオスズメバチと違って,穏やかで攻撃性の弱いハチのようです. 湯ノ沢川の河原でクロスズメバチの全体像を撮っていましたので,参考までに挙げておきます(写真下右,2009年10月22日).


トラマルハナバチの女王発見 ⁈


2010年9月30日 トラマルハナバチ 白神自然観察園にて.
観察園の林床でマルハナバチのようなハチを見つけました.随分派手な毛並みだなと思い,近寄ってよく見ると,オレンジ色の長い毛,腹部のトラのような紋様が特徴のトラマルハナバチでした.その風格からすると女王バチかも・・・.この時季,女王バチはネズミやモグラの古い坑道を利用し地下へもぐり繁殖行動に入るようですので,その穴を探してうろついていたのかもしれません.トラマルハナバチは八チの仲間ですが,おとなしい性格で触っても刺されることはほとんどないようです.
トラマルハナバチはその脚に寄生ダニを抱えていることが多いそうです.被寄生個体があまり被害を受けていないようであれば,共生関係にあるのかも・・・.写真右はその部分の拡大.
オオアリ属の仲間: 結婚飛行前夜か?


2010年6月6日 オオアリ属の仲間 白神自然観察園にて.
この日,陽が落ちようとする夕刻に観察園の大きな松の老木の根元で黒いアリの集団を見つけました.通常目にするような羽のないアリの他に大きさの異なる羽アリも交じっています.参考までに右にその一部を拡大した写真をあげておきます.元青森縣郷土館学芸員の山内智さんに見ていただいたら,“中胸や腹節の細部が見えないので種名まではわからないが,オオアリ属の仲間でしょう”とのことでした.
アリは5月から6月にかけて生殖能力を持つ若い雌の羽アリと雄の羽アリが一斉に結婚飛行に飛び立ちます.この写真では羽アリたちがそれほどびっしりと群がっていないので,結婚飛行前夜ないしは大半の羽アリたちが既に結婚飛行に飛び立ったあとの集団というところでしょうか.一般に雌雄の羽アリは結婚飛行中に空中で交尾をし,女王は一生生み続けるだけの精子を受け取ります.交尾した雌の羽アリは地上にもどり自ずから翅を切りおとし,新たな命の誕生に備え,雄の羽アリは交尾の後,命が燃え尽きると言います.写真の中の大きなサイズの羽アリが雌,雌の半分くらいの小さい羽アリが雄でしょう.
甲虫たち
カメノコテントウの美しさに魅せられる!


2010年7月9日 カメノコテントウ (旧)川原平砂子瀬にて.
(旧)砂子瀬地区の砂川学習館(2016年津軽ダムの竣工に伴い水没)のそばのオニグルミの葉上で何やらエサにかぶりついているテントウムシの幼虫をみつけました(写真左).図鑑で調べてみたらカメノコテントウの若齢幼虫で,食べられているのはクルミハムシの幼虫のようです.クルミハムシの幼虫はもっぱらクルミの葉を食べ,葉脈だけを残し食べつくします. 近くの葉の上にはクルミハムシの蛹(写真右の小さい方)にありつこうと近づくカメノコテントウの終齢と思われる幼虫(写真右の大きい方)もいました.カメノコテントウはよほどクリハムシが好きなようで,クルミハムシの幼虫・蛹だけでなく成体すらも押さえつけて食べてしまいます.クルミハムシにとっては,カメノコテントウは最大の天敵といえるでしょう.



2010年7月18日 川原平砂子瀬にて.
写真左 クルミハムシの蛹の抜け殻.クルミハムシの幼虫はオニグルミの葉の主脈にとりついて蛹となる
ようで,食いつくされたオニグルミの葉の主脈に並んでぶら下がっている蛹の抜け殻をみつけることが
あります.奇妙奇天烈な姿をしているので,遠くから見ても一目瞭然です.
写真中 羽化して間もないクルミハムシの成虫.翅の艶もよくつい見惚れてしまいます.大きさ7~8mm.
写真右 クルミハムシの幼虫に食い荒らされぼろぼろになったオニグルミの葉の上でクルミハムシの蛹を
採餌するカメノコテントウ.

2010年7月15日 カメノコテントウの蛹 川原平砂子瀬にて.
蛹になると,採餌をやめオニグルミの葉の上で固着したように動かなくなります.近いうちに羽化がはじまるでしょう.


2010年7月18日 川原平砂子瀬にて.
写真左: 3日ほど後に同じ場所を訪れてみると,すでに羽化した成虫もいて,写真の個体は今まさに蛹の
殻を破って現れたばかりの羽化直後のカメノコテントウです.
写真右:写真左の羽化成虫が飛び立った後の蛹の抜け殻です.

2010年7月18日 カメノコテントウの成虫 川原平砂子瀬にて.
クルミハムシによってぼろぼろに食いあさられたオニグルミの葉の上に止まっていました.艶々した翅で傷みや汚れもなく,羽化して間もない個体のようです.カメノコテントウは体長12mmほどの日本最大級のテントウムシで,黒地に赤の独特の紋様が艶やかでとても美しいテントウムシです.食肉性のカメノコテントウがどうしてこんなに食い荒らされたオニグルミの葉上で見つかるのか納得できました.
ベニヒラタムシ

2010年4月 7日 ベニヒラタムシ 川原平にて.
頭部・胸部・脚・触角など真っ黒なのに,上翅だけは鮮やかな深紅で,13mmくらいのよく目立つ甲虫です.
二ホンキマワリ

2011年1月27日 二ホンキマワリの幼虫 白神自然観察園にて.
厳冬期の観察園で朽ちた大木の表面を剥がして見たら,小鳥屋さんで売っているミールワームのような体型の茶色っぽい虫が蠢いていました.頭部が見えないのではっきりしませんが,これはゴミムシダマシの仲間のキマワリの幼虫のようです.キマワリは幼虫も成虫も朽木を食べるのだそうです.お食事中にお住まいを壊してごめん!寒いからはやく奥の部屋にもぐってね!
その他の甲虫10種

左上から順に時計回りに
2009年8月22日 オオヒメゲンゴロウ(右)とモリアオガエルのオタマジャクシ 広泰寺池にて.
2010年10月7日 カブトムシ 大沢川沿いの林にて.
“昆虫の王様”として子供たちに絶大な人気がありますが,確かにその大きさ・風格は他に引けを取りませんね.
2010年12月18日 コブヤハズカミキリ 白神自然観察園にて.
羽が退化して飛べないカミキリの仲間.ヤハズ(矢筈)とは矢の後端の弓の弦(つる)を受ける部分で,上翅基部に大きなコブがあり,上翅末端部が矢筈のような形をしていることからこの名がついたようです.

左上から順次時計回りに
2009年6月8日 オトシブミ(種名不詳)の揺籃(ようらん) 白神自然観察園にて.
解説は「オトシブミとその揺籃」のところで.
2009年5月28日 オオヒメゲンゴロウ 広泰寺池にて.
体長13mmほどありましたので…,オオヒメゲンゴロウのようです.
2010年5月5日 クロホシヒラタシデムシ 大川沿いの杉林にて.
赤い色の背面前胸部に4つの黒点があるのが特徴です.動物の死体や糞に集まっているのをよく目にし
ます.この日もカビで覆われた動物の古い糞の上でした.
2010年8月21日 アカハナカミキリ 久渡寺にて.
読んで字のごとくで,触角・脚部・頭部以外の全身が赤褐色の色をしているカミキリで,成虫がノリウツギやウドなどの花に多く集まります.

右下より反時計回りに
2009年7月5日 ナナホシテントウ 大沢林道にて.
その名の通り,赤ないしオレンジ色の鞘翅に7つの黒い紋様のごく普通にみられるテントウムシで,肉
食性で成虫も幼虫もアブラムシを好んで食べます.
2010年7月25日 マメコガネ 白神自然観察園にて.
日本全土に分布する小型のコガネムシ.体側後半の縁に見える白いしま模様がこの種の特徴です.ナナホシテントウと違い植食性で,大豆やダイコンなどの葉を食い荒らすので,害虫とされています.
2011年5月12日 マガタマハンミョウ 白神自然観察園にて.
背中の模様が勾玉(まがたま)に似ているというのがその名の由来のようです.飛べないカミキリとしてコブヤハズカミキリを飛べないカミキリと紹介しましたが,マガタマハンミョウも翅が退化的で飛べないハンミョウなのです.
オトシブミとその揺籃(ようらん)

写真左下: 2010年6月6日 葉上のヒゲナガオトシブミ(?) 白神自然観察園にて.
写真左上2枚・右: オニグルミの葉を巻きあげてつくったオトシブミの揺籃.
オトシブミはゾウムシの仲間で,特定の種の名前ではなく,オトシブミ科の昆虫の総称です.オトシブミの仲間はオニグルミやサワグルミなどの葉を口器で裂き,巻きあげてゆりかご(揺籃)をつくる特技を持ち,その中に卵を産み,卵からかえった幼虫はその揺籃を食べて蛹となり,やがて羽化します.この揺籃の形が昔の文(巻き手紙)に似ていて,親虫が揺籃完成後,葉からチョキンと切り落とすことから,オトシブミと名づけられたようです.何とも神業のような技能をもつ味わい深い昆虫です.
バッタの仲間
ヒメギス

2009年8月19日 ヒメギス(♀) 秋田県八峰町にて.
全身黒~黒褐色で,“黒いキリギリス”とも呼ばれるキリギリスの仲間です.キリギリスより小さいので,ヒメキリギリスを略してヒメギスと名づけたのでしょうか? 黒く上に反った産卵管と前胸側面の後端に沿った白い縁取りがこの種の特徴のようです.
ハネナシコロギス

2009年8月19日 ハネナシコロギス 秋田県八峰町(白神体験センター)にて.
八峰町の白神体験センター近辺の草地で翅のない見慣れない昆虫に出会い写真をとりました.元青森県立郷土館学芸員の山内智さんに写真を見ていただいたところ,ハネナシコロギスとのことでした.コロギスとは体型はコオロギに似ていて,色調などはキリギリスに似ているグループで,ハネナシコロギスは翅が退化し飛べなくなったコロギスということです.
ミヤマフキバッタ

2011年8月19日 ミヤマフキバッタ 白神岳山頂尾根にて.
翅が退化し小さくなり,飛べなくなった山地性のフキバッタです.腹部両脇に黒っぽく見えるのが退化的な翅です.ミヤマフキバッタは地域によって翅の退化具合が異なるようで,何種にすべきかもわかっていません.白神岳のミヤマフキバッタは翅が極端に退化しているようです.
その他のバッタ・キリギリス類

写真左: 2010年9月7日 バッタ科の仲間 砂子瀬遺跡にて.
写真右: 2010年9月7日 キリギリス科の仲間 砂子瀬遺跡にて.

写真左: 2009年7月4日 バッタ科の仲間 大沢林道沿いにて.
写真右: 2010年9月7日 クルマバッタモドキ 砂子瀬遺跡にて.
その他のバッタ・キリギリス類の同定に関しては,青森県立郷土館学芸員の
山内 智さんにご協力いただきました.

