白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった昆虫たち ②
蝶の仲間たち – その1(タテハチョウ科)
クジャクチョウ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年7月18日 クジャクチョウ (旧)砂子瀬小学校(砂川学習館)跡にて.
前翅と後翅に計4個の大きな目玉模様(眼状紋)をもつ美しい蝶で,この目玉模様が孔雀の飾り羽を思わせることから“クジャクチョウ”という名前がついたのでしょう.学名の種小名にgeishaという語がつけられており,日本の芸者さんのようにあでやかで,赤を基調とする鮮やかな紋様を有するクジャクチョウは魅惑的で,私のもっとも好きな蝶の1つです.
ルリタテハとシータテハ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2010年10月7日 ルリタテハ 大沢林道にて.
ルリタテハ属1属1種の蝶です.濃い黒褐色の翅の周縁に沿って走る鮮やかな瑠璃色のラインが特徴です.林縁などで翅を広げて止まっているのをよく目にします.
写真右 2010年10月7日 シータテハ 大沢林道にて.
シータテハの“シー”とは何を意味するのだろうと,子供のころからずっと思っていましたが,やっとわかりました.それは後翅の裏側真ん中たりあるアルファベットのC字型模様から来ているのだそうです.この写真は表面なので見えませんが・・・.
コミスジとミスジチョウ
黒褐色の地に左右両翅にわたって三本の白い帯が走り,これが三の字に見えるのがミスジチョウの仲間で,この三本の白帯の紋様の違いによってミスジチョウ,コミスジ,ホシミスジを区別できます.
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2009年8月19日 コミスジ 八峰町にて.
前翅表面(写真では左側)最前列の白帯の末端が細く尖っているのがコミスジのパターン.
写真右 2010年7月24日 ミスジチョウ 大川源流部鍋倉森にて.
白帯が三本あり,コミスジとよく煮ていますが,最前列末端の白帯の紋様が途中で途切れることがないのがミスジチョウのパターン.
ミドリヒョウモン
オス・メスともに黄色地に黒い線条や黒い斑紋が並ぶ“ヒョウモン”の紋様を有していますが,メスの後翅裏面が薄緑色を帯びているという特質があり“ミドリ“という名がついています.
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2009年7月23日 オカトラノオの花にとまったミドリヒョウモン 大沢林道にて.
写真左 背面から撮ったミドリヒョウモン(♂).
写真右 後翅の裏面が見えるアングルで撮ったミドリヒョウモン(♂).
メスグロヒョウモン
黄色の地に黒っぽい斑点が散らばるヒョウモンチョウの仲間ですが,典型的な性的二形を示し,オスは一般的な豹紋の翅,メスは同種とは思えないほどの紋様・色調が異なり,黒地に白帯の紋様の翅を有しています.
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2010年9月30日 メスグロヒョウモン(♀) 白神自然観察園にて.
写真右 2010年8月18日 メスグロヒョウモン(♂) 大川林道にて.
ウラギンヒョウモン
翅の表側は一般的なヒョウモンチョウの紋様ですが,後翅の裏側に銀白色の丸い斑点紋様が多数見えることから“ウラギン(裏銀)”の形容がついたものと思われます.
写真左 2009年7月5日 翅を閉じてとまっているウラギンヒョウモン 大沢林道にて.
写真右 2010年10月7日 翅を半分開いているウラギンヒョウモン 白神自然観察園にて.
コムラサキ・オオウラギンスジヒョウモン・アカタテハ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2009年7月5日 コムラサキ 大沢川沿いの空き地にて.
黒っぽい茶色地に薄いオレンジの紋様があるタテハチョウの仲間.オスはこの黒っぽい茶色地の部分が紫色に輝いて見えます.オオムラサキをひとまわり小さくしたような蝶です.
写真右上 2010年9月30日 オオウラギンスジヒョウモン(♀) 白神自然観察園にて.
写真右下 2010年10月7日 アカタテハ 白神自然観察園にて.
前翅表面中央に鮮やかなだいだい色の帯状模様があり,前翅先端は黒く,白色の斑点が並んで見えます.
蝶の仲間たち – その2(その他の蝶)
モンキチョウ
2009年7月5日 オカトラノオの花の上で吸蜜するモンキチョウ 大沢川沿いの湿地にて.
シロチョウの仲間です。オスは黄色だけですが,メスに黄色と白色の2型があります.
イチモンジセセリ と ヒメキマダラヒカゲ
写真左 2009年10月15日 イチモンジセセリ 大川渓流の川原にて.
全身茶色のセセリチョウの仲間.“イチモンジ”というのは,後翅裏に銀色の丸い紋様が一文字に並んで見えることに由来するようです.
写真右 2010年8月22日 ヒメキマダラヒカゲ(♂) 白神自然観察園にて.
茶褐色の翅に黄色い斑紋があるジャノメチョウの仲間です。写真は翅の裏面で,全体として黄土色で,後翅の外縁部に眼状紋がいくつか並んで見えます.
キアゲハとベニシジミ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2010年9月1日 キアゲハ 藤里町にて.
全国どこでも見られるお馴染みのアゲハチョウです。ナミアゲハ(単にアゲハともいう)とよく似ていますが,前翅の基部辺りがナミアゲハでは縞模様になり,キアゲハではこの縞模様はありません.
写真右 2010年10月7日 ベニシジミ 白神自然観察園にて.
前翅周縁に黒褐色の縁取りがあり,赤橙色の地に黒い斑点が入るシジミチョウの仲間です.ベニシジミの“ベニ”は紅色ということで,前翅の翅の地が紅色ということから来ているようですが,季節によって明るいオレンジ色からレンガのような深いベニ色になるようです.
蛾の仲間たち-その1(幼虫)
左上より時計回りで
2009年6月12日 キドクガの幼虫 白神自然観察園にて.
キドクガは5大毒蛾の1つといわれ,成虫のみならず幼虫や蛹も強烈な毒針毛をもっているので,触ったりするととんでもなく痒くなったり赤く腫れたりします.要注意!
2009年6月12日 クワゴマダラヒトリの幼虫 白神自然観察園にて.
クワやニセアカシアなどの広葉樹につくヒトリガの仲間で,大きいものだと5 cmぐらいにもなるようです.ヒトに悪さをするような毒はないようです.
2009年6月26日 ヨツボシホソバの幼虫 久渡寺参道にて.
ヒトリガ科の仲間です.毒性の強い長い毛を持っており,要注意です.
2010年8月27日 アメリカシロヒトリ 白神自然観察園にて.
アメリカ原産のヒトリガの仲間で,幼虫の針毛に刺されても腫れたり痒くなることはほとんどないようです.幼虫が食べる食草はサクラやリンゴ・カキなどと広く,甚大な被害を及ぼすことで知られています.
コエビガラスズメ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2011年7月31日 コエビガラスズメの幼虫(スズメガ科)白神自然観察園にて.
鮮やかな黄緑色のボディと体側に並ぶ紫と黒と白の斜条ラインがとても美しく,名前がわからないまま撮った1枚です.図鑑で調べてやっとコエビガラスズメの幼虫だと判明しましたが,成虫は幼虫からは想像もつかないほど地味な蛾でした.
蛾の仲間たち-その2(成体)
昼飛ぶ蛾・キンモンガ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2009年7月23日 キンモンガ 白神自然観察園にて.
観察園の遊歩道でトリアシショウマの白い花の上に止まっているひときわ目立つ見慣れない蝶を発見! と小躍りしたのですが,カメラを通してじっくり見るとアゲハモドキガ科の蛾でした.少々蛾っかり(?) したのですが,黒地に黄色い紋様が美しい蝶のような姿に改めて見惚れたものです.日中に飛び回り,蜜を吸いに花に集まるので,よく蝶に間違われるようです.私もその一人ですが….
蛾類4種
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年6月6日 オオミズアオ 白神自然観察園にて.
ヤママユガの仲間で,大きいもので12 cmほどになる青白色の大型のガです.
2010年9月7日 オオタバコガか? 砂子瀬遺跡にて.
津軽ダムの完成に伴いこの遺跡は水没してしまいましたが,ダム完成前に砂子瀬遺跡を訪れ撮影したものです.
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
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2010年9月30日 ナナスジナミシャク 白神自然観察園のブナ林にて.
しばしばブナ林で大発生する2 cmそこそこの小型の蛾で,幼生はブナの実を食するそうです.この日の観察園のブナ林は,ナナスジナミシャクの大群が飛び交い,あたかも白い煙幕が揺れ動いているように見えました.
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
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2010年10月6日 イカリモンガ 大川林道にて.
先に紹介したキンモンガのように昼飛ぶガで,花に止まる時は翅を閉じて止まるので“いかり(錨)”の紋様を確認しにくいのですが,たまたま翅を開きかけた瞬間が撮れました.真上から見ると左右の前翅両端にオレンジ色の錨紋様が見えるのですが….
ライトトラップでとらえた蛾類4種
いずれも白神自然環境研究センターの中村剛之さんのライトトラップに集まってきたものです.
上左より時計回りに
2010年6月6日 フトオビホソバスズメ 白神自然観察園にて.
元青森県立郷土館学芸員の山内智さんによると,青森県では青森市大滝平,黒石市,十和田市蔦などから記録されているようで,青森県内ではあまり多くない種類とのことです.
2011年8月6日 ノコギリスズメ 白神自然観察園にて.
スズメガ科の仲間.ふつう蛾は前翅
が前方に,後翅は前翅より後方に開いて止まるが,ノコギリスズメは後翅が上翅前縁よりも前に開いて止まります.
2011年8月6日 シロジマエダシャク 白神自然観察園にて.
白地に灰色の斑紋があるエダシャクの仲間。山内智さんによると白神山地では鰺ヶ沢町赤石川や赤石川支流の五人役沢などから報告されているとのことです.
2011年8月6日 ムラサキシャチホコ 白神自然観察園にて.
この写真は枯葉ではありません.見事に枯葉紋様を体現させたシャチホコガの成体なのです.この個体は誘蛾灯で白い布に誘引され見つけたもので,枯葉がたくさん落ちているところだと,見つけることは極めて難しいです.色具合はもちろん枯葉のめくれ具合といい,葉脈のはてまでも枯葉になりきったこの蛾は環境に完璧に溶け込んでおり,究極の隠蔽擬態(いんぺいぎたい)と言えるでしょう.