白神で出あった両生類 ~ サンショウウオたち​

ハコネサンショウウオ

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2010年7月15日 ハコネサンショウウオの幼生 芹沢にて.

 (旧)川原平から入る芦沢の谷川で,人面魚のような顔つきのサンショウウオに出あいました.ハコネサンショウウオの幼生は真正面から見ると人の顔によく似ていて,人面幼生とも呼ばれています.幼生の前肢・後肢の真っ黒な鈎爪もこのサンショウウオの特徴の1つです(右下隅拡大写真).渓流性のハコネサンショウウオの幼生は水流に押し流されないよう鈎爪が発達しているのでしょう.成体になり陸上生活になると鈎爪はとれてしまいます.ハコネサンショウウオの幼生には外鰓があり,鰓呼吸で3年ほど渓流生活し,やがて陸にあがり成体となりますが,肺ができないので一生皮膚呼吸で生活するとされています.

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2011年5月9日 ハコネサンショウウオの幼生 芦沢にて.

 芦沢の谷川で上掲の個体とは見栄えが違う幼生を見つけました.同じ種の幼生とは思えないほど紋様が違います.ズームアップしてみると顔相はやはり人の顔に似ていますね(写真右).たくさん見てゆくと体の紋様がいろいろありますので,いくつか写真で紹介しましょう.

ハコネサンショウウオの幼生紋様変異.jpg

上左より時計回りで

2011年5月9日: 2011年6月1日: 2009年9月19日: 2009年9月19日

 ハコネサンショウウオの幼生の背面は桃色・橙色・褐色・黄土色等の不規則な紋様変異を示し,いくつかのタイプの紋様があるようです.彼らは3冬を越して幼生期を終え陸へ上がるとされていますので,幼生の生長のステージにより紋様が変わるのでしょうか?写真で見ると幼生の生息環境(microhabitat)に応じた紋様となっているようにも見えます.DNAレベルで分析すればその謎が解けるかもしれません.いずれも川原平 芦沢の谷川で撮影.これらのハコネサンショウウオの動画も撮りましたので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください(映像の中で幼生のサイズは6.5ミリと言ってますが,6センチ5ミリの言い間違いです).

クロサンショウウオ

くろサンショウウオの産卵と発生ー1.jpg

2010年5月1日 クロサンショウウオの産卵 広泰寺参道脇の小沼にて. 

写真上左: 9:43am,産卵直前のクロサンショウウオの群れ.10匹前後のオスのクロサンショウウオがメ

 メスの周りで絡み合って産卵を促しています.メスは一回の産卵で1対の卵嚢を産みます.

写真上右: 10:00am,産卵直後.卵嚢は対をなして水底の枝切れなどに産みつけられますが,この場面で

 は対の片方がまだ見えていません.

写真下右 10:07am 1対の卵嚢が見えます.このあとメスが入れ替わり次々と卵嚢対が産みつけられるこ

 とになります.

写真下左 10:?am 水中の小枝に産み付けられた3対の卵嚢.産卵直後の卵嚢(左側2対)の方が先に

 生み出された卵嚢よりほんの少しピンクがかって見えます.

これらの産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

クロサンショウウオの卵嚢a.jpg

クロサンショウウオの卵嚢 いずれも広泰寺池にて.

写真上段 2009年5月15日(左)と9日後の5月24日(右)に撮影した同一の卵嚢.左右の写真の黄色っぽ 

 い大きな卵黄は先に産卵され枝からはずれた古い卵嚢です.

写真下段 2010年4月17日(左)と5月5日(右)に撮影した別の卵嚢群. 

 これらの写真から分かるように,産卵後日の浅い卵嚢は細長い三ケ月状ですが,卵嚢に含まれるアルブミンが水を吸収し,日が経つにつれて真っ白なマシュマロのように膨らんできます.

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2009年4月29日 クロサンショウウオの卵嚢群 広泰寺池にて.

 ほとんどの卵嚢は葉が落ちた細長い枯枝に対をなして産みつけられます.それぞれの卵嚢には数十個の卵が入っているといわれています. 

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2009年4月29日 クロサンショウウオの卵嚢 広泰寺池にて.

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2010年5月15日 クロサンショウウオの卵嚢 広泰寺池にて.

 産卵後1週間もすると,半透明の外層と乳白色の内層がはっきりわかるようになります.

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2009年5月5日 クロサンショウウオの成体と卵嚢 広泰寺池にて.

 外層の透明ジェリー層が厚くなり,その内側の乳白色ジェリー層内では卵の発生がどんどん進んでいきます.卵嚢の状況をチェックしているのでしょうか,卵嚢の周りでうろついているクロサンショウウオの成体を見つけました.

クロサンの卵嚢と卵発生.jpg

上左より時計回りで(いずれも広泰寺池にて)

2009年5月5日 外層の透明ジェリーがほとんど溶けてしまった卵嚢.乳白色の卵嚢内で卵膜につつまれ

 た尾芽胚と思われる胚がいくつか見えます.

2009年5月15日 腹部に卵黄を少し抱えている外鰓でき初めの胚が見えています.

2009年5月15日 上右の卵嚢より早く産卵された卵嚢では,乳白色の内層部分も次第に半透明になり卵

 に包また外鰓初期胚も見えるようになります.左下の個体は卵黄がほぼ吸収された胚のようです.

2009年5月15日 内層ジェリーの崩壊がさらに進むと,写真のように外鰓を使って動き回る胚を内包

 した卵膜球が出て来ることもあります.このあと卵膜を破って自由に泳ぎまわる外鰓期幼生となりま 

 す.

クロサンショウウオの孵化と卵膜.jpg

写真左: 2010年5月23日 孵化後まもないクロサンショウウオの幼生 広泰寺池にて.

 外鰓はできていますが,まだ手(前肢)も足(後肢)も生えていません.

写真右: 2011年7月2日 孵化後空っぽになった卵膜と溶けかかっている内層ジェリー.

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2010年5月23日 クロサンショウウオの外鰓幼生 広泰寺池にて.

 孵化して間もない外鰓幼生たち.卵膜を破って新生の外鰓幼生が次々とでてきます.孵化後しばらくは卵嚢ジェリーにくっつくようにとどまっていますが,やがて自由に泳ぎ出します.

クロサンショウウオの幼生4景

クロサンショウウオの幼生4態.jpg

左上より時計回りに

2009年5月21日 卵嚢におさらばし,新しい環境へと進出した新生の外鰓幼生.

2009年5月28日 未熟ながら前肢が生えてきました.オタマジャクシは後肢が先にでてき  ますが,サンショウウオは前肢の方が先にでてきます.

2009年8月1日 前肢後肢が揃い,3対の外鰓も立派になってますね.

2009年7月23日 右の個体よりずっと早くに孵化した幼生.

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2009年6月18日 後肢がでてくる前の外鰓幼生(写真左).未熟な前肢と立な外鰓が見えています.

2011年7月21日 前肢・後肢が出そろった外鰓幼生(写真右) どちらも広泰寺池にて捕獲,観察容器に 入れて撮影.

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2010年4月25日 クロサンシヨウウオの成体 白神自然観察園そばの小沼で捕獲.岸辺に上げて撮影.

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2010年4月25日 クロサンシヨウウオの成体 白神自然観察園そばの小沼で捕獲.岸辺に上げて撮影.全長 15.7cm.

トウホクサンショウウオ

 新潟県、群馬県、栃木県の北部を含め,東北地方に分布する日本固有のサンショウウオで,丘陵地から山地の池や沼,湿地などの周辺部の林床に生息しています.産卵は生息場所の水の流れがゆるい湿地やある程度の水の出入りのある浅い池や沼などで行われます.

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2009年5月5日 トウホクサンショウウオの卵嚢 広泰寺池にて.

 産卵は年1回で,雪が消える頃,バナナ型の半透明の卵嚢1対を水底の枯れ枝やスギの枯れ葉などに産みつけます.1個の卵嚢の中には30個~50個の卵が入っています.この写真では神経胚前の初期発生の段階のようです.

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2009年5月13日 尾芽胚期の卵嚢   広泰寺池にて.

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2009年5月24日 尾芽胚期の卵嚢

 広泰寺池にて.

​卵嚢内のマシュマロのような大きな白い球体は発生停止した死卵のようです.

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2009年5月21日(写真左) トウホクサンショウウオの卵嚢 広泰寺池にて.

 卵嚢内の胚は尾芽胚あたりまで発生が進んでいて,ピクピクと動き出しています.

2009年6月20日(写真右) トウホクサンショウウオの卵嚢 広泰寺池にて.

 卵嚢の中では尾芽胚を過ぎて初期幼生まで進み,手足はまだできていませんが,全身で反り返れるほ

どになっています.左側の1対の卵嚢はすでに幼生が卵嚢を破って外に出たあとの空になった卵嚢です.

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2010年7月9日 トウホクサンショウウオの幼生 広泰寺池にて.

 卵嚢から出て自由に動くようになり前肢が形成され,後肢ができつつある幼生.クロサンショウウオの幼生とよく似ているので区別が難しいですが,尾の先が幅広となっているので,トウホクサンショウウオでしょう.サンショウウオはカエルとは違い,前肢が先に形成され,後肢は後からできます.

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2011年7月8日 トウホクサンショウウオの幼生 広泰寺池にて採集.

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2010年6月3日 トウホクサンショウウオの幼体 広泰寺池にて.

 トウホクサンショウウオもクロサンショウウオも幼体の時は体表面に青白色の細かな斑紋が現れます.どちらもよく似た青白斑ですので,この青白斑から種を見分けることはできませんが,尾の長さから区別できるようです(尾長が頭胴長より長ければクロサンショウウオ,短ければトウホクサンショウウオ).

 トウホクサンショウウオの多くは生まれた年の秋までに4—5cm程度になって成体へと変態すると言われていますが、なかには幼体のまま越冬し,翌春成体になるものもいるようです.写真の個体は7cm近くもあり,6月初めのころですので,幼体のまま越冬した幼体とみてよいでしょう.

アカハライモリ

 アカハライモリはイモリ科に属し,サンショウウオ類とは科のレベルで違いますが,同じ有尾類ですので,参考のため紹介します.

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2009年6月7日 アカハライモリ(♂) 広泰寺池にて.

 プラスチック容器に入れて下から撮影.“アカハライモリの腹側は赤い”というのは子供のころから知っていましたが,これほど鮮やかな模様になっているのは初めて気がつきました.図鑑やインターネットで調べてみると,この赤い模様は一定しておらず,網目模様の形・サイズが個体によって異なり,腹面全体的に赤いものから背面まであかいもの,ほんの一部分が赤いものまで幅広く変異するようです.この個体は総排出口の周辺の大きなふくらみ,尾が上下に幅広であること,目の後方の出っ張りなどからオスのようです.全長10 cm前後.

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2011年5月12日 アカハライモリ 広泰寺杉並木参道脇の小沼にて.

 クロサンショウウオの卵嚢の近くを徘徊する(?)アカハライモリ.

クロサンショウウオの幼生たちがいつ卵嚢を破って出てくるか,

チェックしているのでしょうか?サンショウウオやカエルの幼生は

イモリにとって格好の獲物なのです.