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白神の森で出あった両生類

          ⑴ カエルたち​

大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.

 白神山地核心部の青鹿岳の辺りに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5 km辺りに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(表紙写真参照).左の写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出あったヒキガエルです.

大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので,ナガレヒキガエル発見! かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.

ヒキガエル2景

アズマヒキガエル2景.jpg

写真左 2011年5月19日 ヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて。

写真右 2011年7月23日 ヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.

 上の3枚の写真からわかるように,ヒキガエルには個体によって褐色・黄褐色・赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれています.

ヒキガエルの産卵とオタマジャクシ

ヒキガエルの産卵とオタマジャクシ.jpg

写真左 2011年5月19日 ヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.

 ヒキガエルの卵塊は2~5 mほどの紐状ジェリーで,その中に径2~3 mmの黒い卵が数千個入っていると言います.

写真右 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.

 この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

ヤマアカガエル

2010年4月15日観察園 124.jpg

2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊 広泰寺池にて.

 写真中央の辺りと右下隅に抱接中のカップルがいます. 背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです. 中央のカップルのメスはお腹がほとんどペチャンコですので,産卵はほぼ終えたようです. 右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます. 時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になります.

ヤマアカガエルの卵発生

ヤマアカガエルの卵塊.jpg
2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池zoomup.jpg

写真左 2009年4月29日 原腸胚~神経胚辺りまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺池にて.

写真右 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.

このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり,尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を右にあげておきます.

卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ

p19-2   ヤマアカガエルの幼生(オタマジャクシ).jpg

写真左 2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマジャクシ 広泰寺池にて.

写真右 2011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ 広泰寺池にて.

ヤマアカガエルの変態と生長4景

ヤマアカガエルの成長a.jpg

左上より順に時計回りで(いずれも広泰寺池にて)

2011年7月 2日 ヤマアカガエルの 

オタマジャクシ. やがて前肢・後肢が出て変態します. 

2009年8月 1日 オタマジャクシの 

時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.

2009年4月29日 そろそろ陸上生活 

へ行するヤマアカガエル.

2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.

ヤマアカガエルの成体

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体  

大川渓流・タカヘグリにて.

 ヤマアカガエルは背面両側に筋状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなくまっすぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがわかります.

ニホンアマガエル

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2009年8月19日 二ホンアマガエル(以下 アマガエル)の仔蛙 秋田県八峰町にて.

 鼻孔から目-鼓膜-前肢つけね辺りまで連なる黒いラインが本種同定の指標の1つです.

モリアオガエル

モリアオガエル2景.jpg

写真左 2009年6月20日  

モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.

写真右 2011年6月16日   

モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.

 アマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.

2009年6月12日 包接中のモリアオガエル 広泰寺池.jpg

2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.

 モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤が着いており自在に木に登ります.

白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼のまわりに集まってきます.観察園に隣接する広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかります.

抱接中のモリアオガエル2景.jpg

2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)  広泰寺参道脇の小沼にて.

5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.

2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.

 卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとするオスガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルも見えます.

2010年6月8日 ホウノキの枝先に産卵するモリアオガエルの産卵 広泰寺参道脇の小沼にて..jpg

2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.

 中央に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がり泡状の卵塊作りに励んでいます.直径10~15 cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,卵塊の中で受精した卵はすぐ発生をはじめます.

この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

モリアオガエルの産卵(赤外映像)a.png

2010年6月8日 モリアオガエルの産卵 広泰寺池にて.

 この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.

この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンも連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

広泰寺池

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.  

 本書では広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます.奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます.広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.

モリアオガエルの産卵シーン2景.jpg
モリアオガエル産卵を終えて.jpg

2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン3景 広泰寺池にて.

写真左 サワグルミの小枝の先に産卵中.白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの枝葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.

写真中 コシアブラの小枝の先に産卵中.

写真右 ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親ガエルたちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,多くは森の中へと散らばってゆくようです.

ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊4景

p24-1   モリアオガエルの樹上卵塊4景.jpg

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.

卵塊の中の受精卵は1週間ほどで孵化し,小さなオタマジャクシ(幼生)となり,泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひと飲みにしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることができたとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.フィールドサイン-その① のニホンザルのところで紹介しますが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても,地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.

カジカガエル ~ 渓流性のカエル 

_IGP8918大川カジカガエル抱接a.jpg

2010年6月6日 水の底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の河原にて.

 風薫る初夏,大川の河原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声が聞こえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中にオスガエルをおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

p25-1   カジカガエルの卵塊.jpg

 上掲のカップルの近くで,たまたま水面から半分ほど突き出ている小岩をひっくり返してみたら,神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左).ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中辺りに神経管ができつつある神経胚,右下辺りに尾が形成され

ている尾芽胚がよく見えます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!

IMG_20200610_0001カジカガエル(大川タカヘグリ近辺)a.jpg

2011年7月23日 カジカガエルの仔蛙 大川渓流・タカヘグリにて.

  繁殖期の鳴き声がオスジカに似ていることから,カジカガエル(河鹿蛙)と名づけれたようです.繁殖期のシカの鳴き声なんて聞いたことがないので真偽のほどはわかりませんが,“清流の歌姫”とも呼ばれるだけあって,鳴き声がとてもきれいなカエルです.たくさんのカジカガエルが鳴き競うと美しい音色となり聞き惚れてしまうほどです.

カジカガエルの卵塊と幼体.jpg

写真左 2011年6月6日 カジカガエルの卵塊 大川渓流河畔にて.

写真右 2011年9月9日 カジカガエル仔蛙 大川渓流河畔にて.

 カジカガエルは6~7月頃,渓流の流れの緩やかな浅い淀みのあるところで,石の下の隙間などに卵を産みつけます.水たまりで抱接しているカジカガエルの産卵時の様子と卵塊を動画に撮ってありますので,興味のある方はこのホームページの「白神散策Movieでご案内」をご覧ください.うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってちょっとだけですが,カジカガエルの鳴き声も聞こえます.

2011年6月6日 カジカガエル 大川渓流.jpg

2011年6月6日 カジカガエルの変異体?

大川渓流の川原にて.

 カジカガエルの卵塊の近くに普通のカジカガエルとは少し見栄えが違うカエルがいました.指先に立派な吸盤がついているので,カジカガエルだとは思ったのですが,念のため広島大学両生類研究センターの三浦郁夫博士に写真を見ていただいたところ,やはり普通のカジカガエルとはちょっと違うようだということで,弘前大学の白神自然環境研究センターの中村剛之教授に協力を依頼し,もしこれと同じような個体が見つかったら,広島大学の三浦先生に送ってもらい,

めて遺伝子(DNA)レベルで調べていただくことになっています(2020年9月3日).

アズマヒキガエル2景.jpg

写真左 2011年5月19日 ヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて。

写真右 2011年7月23日 ヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.

 上の3枚の写真からわかるように,ヒキガエルには個体によって褐色・黄褐色・赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれています.

ヒキガエルの産卵とオタマジャクシ

ヒキガエルの産卵とオタマジャクシ.jpg

写真左 2011年5月19日 ヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.

 ヒキガエルの卵塊は2~5 mほどの紐状ジェリーで,その中に径2~3 mmの黒い卵が数千個入っていると言います.

写真右 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.

 この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

ヤマアカガエル

2010年4月15日観察園 124.jpg

2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊 広泰寺池にて.

 写真中央の辺りと右下隅に抱接中のカップルがいます. 背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです. 中央のカップルのメスはお腹がほとんどペチャンコですので,産卵はほぼ終えたようです. 右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます. 時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になります.

ヤマアカガエルの卵発生

ヤマアカガエルの卵塊.jpg
2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池zoomup.jpg

写真左 2009年4月29日 原腸胚~神経胚辺りまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺池にて.

写真右 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.

このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり,尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を右にあげておきます.

卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ

p19-2   ヤマアカガエルの幼生(オタマジャクシ).jpg

写真左 2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマジャクシ 広泰寺池にて.

写真右 2011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ 広泰寺池にて.

ヤマアカガエルの変態と生長4景

ヤマアカガエルの成長a.jpg

左上より順に時計回りで(いずれも広泰寺池にて)

2011年7月 2日 ヤマアカガエルの 

オタマジャクシ. やがて前肢・後肢が出て変態します. 

2009年8月 1日 オタマジャクシの 

時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.

2009年4月29日 そろそろ陸上生活 

へ行するヤマアカガエル.

2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.

ヤマアカガエルの成体

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体  

大川渓流・タカヘグリにて.

 ヤマアカガエルは背面両側に筋状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなくまっすぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがわかります.

ニホンアマガエル

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2009年8月19日 二ホンアマガエル(以下 アマガエル)の仔蛙 秋田県八峰町にて.

 鼻孔から目-鼓膜-前肢つけね辺りまで連なる黒いラインが本種同定の指標の1つです.

モリアオガエル

モリアオガエル2景.jpg

写真左 2009年6月20日  

モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.

写真右 2011年6月16日   

モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.

 アマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.

2009年6月12日 包接中のモリアオガエル 広泰寺池.jpg

2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.

 モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤が着いており自在に木に登ります.

白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼のまわりに集まってきます.観察園に隣接する広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかります.

抱接中のモリアオガエル2景.jpg

2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)  広泰寺参道脇の小沼にて.

5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.

 卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとするオスガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルも見えます.

2010年6月8日 ホウノキの枝先に産卵するモリアオガエルの産卵 広泰寺参道脇の小沼にて..jpg

2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.

 中央に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がり泡状の卵塊作りに励んでいます.直径10~15 cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,卵塊の中で受精した卵はすぐ発生をはじめます.

この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

モリアオガエルの産卵(赤外映像)a.png

2010年6月8日 モリアオガエルの産卵 広泰寺池にて.

 この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.

この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンも連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

広泰寺池

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.  

 本書では広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます.奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます.広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.

モリアオガエルの産卵シーン2景.jpg
モリアオガエル産卵を終えて.jpg

2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン3景 広泰寺池にて.

写真左 サワグルミの小枝の先に産卵中.白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの枝葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.

写真中 コシアブラの小枝の先に産卵中.

写真右 ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親ガエルたちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,多くは森の中へと散らばってゆくようです.

ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊4景

p24-1   モリアオガエルの樹上卵塊4景.jpg

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.

卵塊の中の受精卵は1週間ほどで孵化し,小さなオタマジャクシ(幼生)となり,泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひと飲みにしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることができたとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.フィールドサイン-その① のニホンザルのところで紹介しますが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても,地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.

カジカガエル ~ 渓流性のカエル 

_IGP8918大川カジカガエル抱接a.jpg

2010年6月6日 水の底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の河原にて.

 風薫る初夏,大川の河原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声が聞こえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中にオスガエルをおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

p25-1   カジカガエルの卵塊.jpg

 上掲のカップルの近くで,たまたま水面から半分ほど突き出ている小岩をひっくり返してみたら,神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左).ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中辺りに神経管ができつつある神経胚,右下辺りに尾が形成され

ている尾芽胚がよく見えます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!

IMG_20200610_0001カジカガエル(大川タカヘグリ近辺)a.jpg

2011年7月23日 カジカガエルの仔蛙 大川渓流・タカヘグリにて.

  繁殖期の鳴き声がオスジカに似ていることから,カジカガエル(河鹿蛙)と名づけれたようです.繁殖期のシカの鳴き声なんて聞いたことがないので真偽のほどはわかりませんが,“清流の歌姫”とも呼ばれるだけあって,鳴き声がとてもきれいなカエルです.たくさんのカジカガエルが鳴き競うと美しい音色となり聞き惚れてしまうほどです.

カジカガエルの卵塊と幼体.jpg

写真左 2011年6月6日 カジカガエルの卵塊 大川渓流河畔にて.

写真右 2011年9月9日 カジカガエル仔蛙 大川渓流河畔にて.

 カジカガエルは6~7月頃,渓流の流れの緩やかな浅い淀みのあるところで,石の下の隙間などに卵を産みつけます.水たまりで抱接しているカジカガエルの産卵時の様子と卵塊を動画に撮ってありますので,興味のある方はこのホームページの「白神散策Movieでご案内」をご覧ください.うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってちょっとだけですが,カジカガエルの鳴き声も聞こえます.

2011年6月6日 カジカガエル 大川渓流.jpg

2011年6月6日 カジカガエルの変異体?

大川渓流の川原にて.

 カジカガエルの卵塊の近くに普通のカジカガエルとは少し見栄えが違うカエルがいました.指先に立派な吸盤がついているので,カジカガエルだとは思ったのですが,念のため広島大学両生類研究センターの三浦郁夫博士に写真を見ていただいたところ,やはり普通のカジカガエルとはちょっと違うようだということで,弘前大学の白神自然環境研究センターの中村剛之教授に協力を依頼し,もしこれと同じような個体が見つかったら,広島大学の三浦先生に送ってもらい,

めて遺伝子(DNA)レベルで調べていただくことになっています(2020年9月3日).

アズマヒキガエル2景.jpg

写真左 2011年5月19日 ヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて。

写真右 2011年7月23日 ヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.

 上の3枚の写真からわかるように,ヒキガエルには個体によって褐色・黄褐色・赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれています.

ヒキガエルの産卵とオタマジャクシ

ヒキガエルの産卵とオタマジャクシ.jpg

写真左 2011年5月19日 ヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.

 ヒキガエルの卵塊は2~5 mほどの紐状ジェリーで,その中に径2~3 mmの黒い卵が数千個入っていると言います.

写真右 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.

 この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

ヤマアカガエル

2010年4月15日観察園 124.jpg

2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊 広泰寺池にて.

 写真中央の辺りと右下隅に抱接中のカップルがいます. 背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです. 中央のカップルのメスはお腹がほとんどペチャンコですので,産卵はほぼ終えたようです. 右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます. 時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になります.

ヤマアカガエルの卵発生

ヤマアカガエルの卵塊.jpg
2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池zoomup.jpg

写真左 2009年4月29日 原腸胚~神経胚辺りまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺池にて.

写真右 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.

このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり,尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を右にあげておきます.

卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ

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写真左 2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマジャクシ 広泰寺池にて.

写真右 2011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ 広泰寺池にて.

ヤマアカガエルの変態と生長4景

ヤマアカガエルの成長a.jpg

左上より順に時計回りで(いずれも広泰寺池にて)

2011年7月 2日 ヤマアカガエルの 

オタマジャクシ. やがて前肢・後肢が出て変態します. 

2009年8月 1日 オタマジャクシの 

時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.

2009年4月29日 そろそろ陸上生活 

へ行するヤマアカガエル.

2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.

ヤマアカガエルの成体

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体  

大川渓流・タカヘグリにて.

 ヤマアカガエルは背面両側に筋状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなくまっすぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがわかります.

ニホンアマガエル

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2009年8月19日 二ホンアマガエル(以下 アマガエル)の仔蛙 秋田県八峰町にて.

 鼻孔から目-鼓膜-前肢つけね辺りまで連なる黒いラインが本種同定の指標の1つです.

モリアオガエル

モリアオガエル2景.jpg

写真左 2009年6月20日  

モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.

写真右 2011年6月16日   

モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.

 アマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.

2009年6月12日 包接中のモリアオガエル 広泰寺池.jpg

2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.

 モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤が着いており自在に木に登ります.

白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼のまわりに集まってきます.観察園に隣接する広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかります.

抱接中のモリアオガエル2景.jpg

2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)  広泰寺参道脇の小沼にて.

5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.

 

       『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

                出あった動物たち』へ転載

 

 

 

 

 

 

2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.

 卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとするオスガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルも見えます.

2010年6月8日 ホウノキの枝先に産卵するモリアオガエルの産卵 広泰寺参道脇の小沼にて..jpg

2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.

 中央に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がり泡状の卵塊作りに励んでいます.直径10~15 cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,卵塊の中で受精した卵はすぐ発生をはじめます.

この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

モリアオガエルの産卵(赤外映像)a.png

2010年6月8日 モリアオガエルの産卵 広泰寺池にて.

 この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.

この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンも連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

広泰寺池

『白神どうぶつ讃歌 白神の森で      

         出あった動物たち』へ転載

2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.  

 本書では広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます.奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます.広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.

モリアオガエルの産卵シーン2景.jpg
モリアオガエル産卵を終えて.jpg

2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン3景 広泰寺池にて.

写真左 サワグルミの小枝の先に産卵中.白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの枝葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.

写真中 コシアブラの小枝の先に産卵中.

写真右 ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親ガエルたちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,多くは森の中へと散らばってゆくようです.

ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊4景

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2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.

卵塊の中の受精卵は1週間ほどで孵化し,小さなオタマジャクシ(幼生)となり,泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひと飲みにしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることができたとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.フィールドサイン-その① のニホンザルのところで紹介しますが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても,地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.

カジカガエル ~ 渓流性のカエル 

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2010年6月6日 水の底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の河原にて.

 風薫る初夏,大川の河原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声が聞こえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中にオスガエルをおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

p25-1   カジカガエルの卵塊.jpg

 上掲のカップルの近くで,たまたま水面から半分ほど突き出ている小岩をひっくり返してみたら,神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左).ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中辺りに神経管ができつつある神経胚,右下辺りに尾が形成され

ている尾芽胚がよく見えます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!

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2011年7月23日 カジカガエルの仔蛙 大川渓流・タカヘグリにて.

  繁殖期の鳴き声がオスジカに似ていることから,カジカガエル(河鹿蛙)と名づけれたようです.繁殖期のシカの鳴き声なんて聞いたことがないので真偽のほどはわかりませんが,“清流の歌姫”とも呼ばれるだけあって,鳴き声がとてもきれいなカエルです.たくさんのカジカガエルが鳴き競うと美しい音色となり聞き惚れてしまうほどです.

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写真左 2011年6月6日 カジカガエルの卵塊 大川渓流河畔にて.

写真右 2011年9月9日 カジカガエル仔蛙 大川渓流河畔にて.

 カジカガエルは6~7月頃,渓流の流れの緩やかな浅い淀みのあるところで,石の下の隙間などに卵を産みつけます.水たまりで抱接しているカジカガエルの産卵時の様子と卵塊を動画に撮ってありますので,興味のある方はこのホームページの「白神散策Movieでご案内」をご覧ください.うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってちょっとだけですが,カジカガエルの鳴き声も聞こえます.

2011年6月6日 カジカガエル 大川渓流.jpg

2011年6月6日 カジカガエルの変異体?

大川渓流の川原にて.

 カジカガエルの卵塊の近くに普通のカジカガエルとは少し見栄えが違うカエルがいました.指先に立派な吸盤がついているので,カジカガエルだとは思ったのですが,念のため広島大学両生類研究センターの三浦郁夫博士に写真を見ていただいたところ,やはり普通のカジカガエルとはちょっと違うようだということで,弘前大学の白神自然環境研究センターの中村剛之教授に協力を依頼し,もしこれと同じような個体が見つかったら,広島大学の三浦先生に送ってもらい,

めて遺伝子(DNA)レベルで調べていただくことになっています(2020年9月3日).

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