白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった爬虫類たち
白神ラインの路上で体を温めるニホンマムシ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年9月9日 ニホンマムシ 白神ラインにて.
秋の気配がしのびよる白神ラインの大川橋近くの路上でニホンマムシ(以下 マムシ)を発見. ミズナラやトチの樹が覆いかぶさる道路に木漏れ日がさし,その陽だまりの中に50〜60 cmくらいのずんぐりむっくりのヘビがいたのです. 体を温めていたのでしょう. とても幻想的でした. 7~8 mくらい前でヘビに気がつき,急いで車を止めカメラを手にそっと車を降り,恐るおそる近づきズームアップで激写! 眼の辺りから後方に延びる黒い線(眼線)と体の表面の銭型紋様(黒っぽい〇に黒の中点)がマムシの特徴です. 猛毒のヘビですので,山を歩くときはこの特徴を覚えておいた方がいいですね. ついでに白神ではふつうに見られる無毒のジムグリを紹介しましょう.
大川渓流のほとりでジムグリに遭遇!
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年8月29日 ジムグリ 大川渓流沿いの杉林にて.
暗門川にそそぐ大川渓流沿いを2 kmほど遡った辺りのけもの道で倒木の上でまどろんでいる(?)1 m以上もありそうな濃い赤茶色のヘビに出くわしました(写真左). 突然ばったり目の前にヘビが! ということで,心臓がバクバクするほどびっくりしました. 幸い,そのヘビは元来おとなしいヘビらしく,ほとんど動かずじっとこちらを見ているだけした. そこで私も少し落ち着きをとり戻しじっくり眺め,やっと “ジムグリ” だと認識しました. ジムグリはふつう赤っぽい茶褐色で黒い斑点が入るのですが,この個体は赤みが強くほとんど無紋で,いわゆる “アカジムグリ” と呼ばれるヘビのようです. 頸部が太く, 頭部と胴体の境目がはっきりしないのが特徴です(写真右,一部拡大).
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
ジムグリという名の由来は“地にもぐる”ということから来ているようで,林床に出来ている穴や隙間に潜る習性があり,半地中生活者だといわれています.5分か10分くらいの“長い見つめ合い”が続いた後,このジムグリはすぐそばの大木の根元にある穴にゆっくり滑るようにもぐり込み,姿を消しました.次に,2005年の古い写真で本企画の期間外になりますが,(参考までに)マムシと同様に強い毒を持っているというヤマカガシを紹介します.
暗門のブナ林で出あった鎌首をもたげるヤマカガシ
2005年8月30日 ヤマカガシ 暗門の滝ブナ林散策道にて.
ブナ林散策道のかたわらでシダの葉のかげに潜むヤマカガシに遭遇しました.1m以上はありそうな成体のヤマカガシです.だいだい色のバックに黒い斑紋が入る美しいヘビですが,このだいだい色がうすい個体もあります.水辺を好むようで渓流の川原などでよく見かけます.比較的おとなしいヘビで,めったに噛まれることはありません.とはいえ,状況によっては噛まれることもあり,やはり“要注意!”です.運悪く噛まれたとしても“軽くかまれた程度であれば大したことはない”と言われていますが,深くかまれ死亡した例もあります.その毒はマムシより強いようですので,危険なヘビと認識しておきましょう.頸部にも頚腺とよばれる毒腺がありますので,触らないようにした方がよいでしょう.
ヘビ類3種(アオダイショウ・ヤマカガシ・ジムグリ)
写真左上 アオダイショウ 2009年5月19日 秋田県八峰町にて.
日本本土では最大のヘビといわれ,長いものだと2mにもなるという.無毒のおとなしいヘビで, 人とともに暮らすヘビともいわれ,白神山地などの深山ではあまり多くはないようです.写真のアオダイショウは八峰町の里山に近い中学校の裏で見かけたものです.
写真右上 ヤマカガシ 2010年8月22日 白神自然観察園にて.
午前10時に少し前の観察園散策道の傍で,カエルを追って移動中のヤマカガシです.ヤマカガシはか
なり強い毒の持ち主ですので,遭遇した時は手を出さずそっと離れるに越したことはありません.
写真下 ジムグリ 2009年6月26日 久渡寺参道にて.
体長はせいぜい1m程度の無毒のヘビですが,写真の個体はほぼまっすぐ伸びた状態で,突然目にするとかなり長く見えます.頸部が太く、毒蛇にあるような“エラ”がほとんどないので,頭部と胴体の境目がはっきりしないのがこのヘビの特徴です.これはジムグリがほぼ地中で生活していることと関係するのかもしれません.下にその頭部付近の拡大像を示します.
アオダイショウ
2010年8月18日 アオダイショウ 白神自然観察園にて.
たまたま動いているヘビの尾に気がつき,急いでシャッターを押したもので,目を凝らして見ないと見落としてしまうようなシーンです.頭に近い部分と胴の一部,尾の部分だけが見えています.2m近くもありそうなこのヘビはアオダイショウでしょう.日本では2m近くにもなるヘビはアオダイショウだけなので….
二ホンマムシ芦沢の谷川を渡る
2009年9月3日 芦沢の谷川を渡る二ホンマムシ 芦沢(川原平)にて.
白神山地ではふつうに見られる毒性の強いヘビです.ヤマカガシと同じように川原や林道などでよく見かけます.上の写真からもわかるように,泳ぎも上手なようで,沢筋の谷川を泳いで渡ることもあります.上の写真は右方向から谷川に入り,ちょうど川の真ん中あたりまで進んできたところです.このあと流れに押し流され・・・.
2009年9月3日 芦沢の谷川を渡る二ホンマムシ 芦沢(川原平)にて.(上の写真から続く)
瀬を3段ほど押し流され,左岸にとりついてするすると岩の上へと移動してゆきます.これら3枚の写真はカワネズミの行動を映像にしようと,弘前大学情報処理センターの丹波澄雄先生と所属の学生さん達の協力で芹沢の谷川に赤外自動カメラをセットして撮った動画からの3コマです.右上端のあたりから谷川を渡りきるまでの一部始終を動画に収めてありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
ニホンカナヘビの日向ぼっこ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2011年6月25日 川原の岩の上で日向ぼっこするニホンカナヘビ(以下 カナヘビ) 大川渓流にて.
暗門川の支流の一つである大川沿いの河原で日向ぼっこをしているカナヘビに遭遇しました. 陽だまりの岩にへばりついて体を温めているようで,じっとしていてしばらく動くこともなく,おかげでよいシャッターチャンスに恵まれました. カナヘビは日本固有種で成体は25 cmくらいにもなり,体(全長)の2/3以上を占めるほどの長い尾を有しています. 敵に攻撃されると二ホントカゲ(以下 トカゲ)と同じように簡単に尾を自切し,ピクピク動く尾の切れ端を残し,すたこらさっさと逃げのびます. トカゲと同じように,再生力が強く切れた部分は容易に再生するようで,再生中の個体に出くわすこともあります.
産卵直前のニホンカナヘビ
2011年7月2日 まもなく産卵のニホンカナヘビ 大川渓流の川原にて.
先に紹介したニホンカナヘビの撮影日から1週間ほど後(7月2日)もう一度大川の同じポイントへ行ったら.今度はお腹の大きな産卵直前のニホンカナヘビに出会いました.初夏から夏季にかけて交尾し,1ヶ月ぐらいで産卵するといわれています.写真をズームアップして見ると・・・,身重なのにどうやら脱皮がはじまっているようです.先に紹介したカナヘビは“彼女のお相手だったのかな?”なんて想像するのも楽しいものです.無事産卵し元気な子が孵化しますように!この個体の動画も撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
ニホントカゲの幼体にお目にかかりました
2011年9月10日 ニホントカゲの幼体.大川橋から1kmほど上流の川原にて.
先に紹介した産卵まぢかのニホンカナヘビ(7月2日の写真)のことが気になり,この日,大川の同じポイントに行ってみました.ニホンカナヘビには会えませんでしたが,うれしいことに青いしっぽのちっちゃなニホントカゲに逢うことが出来たのです.感動の瞬間でした.可愛いらしくこちらの様子をうかがいながら、ちょろちょろと石の間を動き回っていました.
更に6日後9月16日と10月下旬に再々度この場所を訪ねたら,動きもいちだんと活発になり順調に生育してました(右上だけが10月下旬,残りは9月16日).緑っぽいブルーからコバルトブルー・濃いブルーのグラデーションを示すきれいな尾はニホントカゲの幼体の特徴です.背中と体側を走る5本の橙色のラインは成体になっても残るようですが,しっぽの特徴的な色彩が消えてしまうのは残念! 写真上左の個体は何かに襲われたのでしょうか,尾の途中に切れそうになっている部分があり,自切しかかっているようです.二ホントカゲは1度の産卵で10個前後産むと言いますので,辛抱強く粘ればもっとたくさん撮れたのかもしれません.動画も撮りましたので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
尾が再生中のニホントカゲ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2009年8月19日 尾を再生しつつあるトカゲ 秋田県八峰町にて.
トカゲやカナヘビは自分の身に危険が及ぶと,自分で尾を切り,ピクピク動く切断した尾に気を取られている敵をしり目に逃げ去ると言います. この現象を自切(じせつ)といいますが,自切の部分からは新たな尾が再生されます.
この写真は八峰町“お殿水”湧水傍の岩の上で休んでいるトカゲを見つけ,尾が短いトカゲだなと思い撮ったものです. よく見ると自切した亜成体のようで,自切してから何日くらい経ったのかわかりませんが,順調に尾を再生しているようで,ほっとしたものです.