フィールドサイン – その③(雪上の足跡痕)

アカネズミ

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写真左右とも2012年1月18日 アカネズミの足跡 白神自然観察園にて.

 白神自然環境研究所近くのとある灌木の根元から研究所の方へまっすぐに点々と下る小さな動物の足跡を見つけました(写真左).よく見るとペアになった足跡が10cm前後の間隔で続きその間を連結するようにみえるたて筋がついています(写真右).これはアカネズミが長い尾を引きずった跡なのです.アカネズミは8~14cmの頭胴長に対して尾長が7~13cmもあるので,尾の跡がついてしまうのです.

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写真左右とも: 2012年1月18日 アカネズミの足跡 白神自然観察園にて.

ヒメネズミ

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写真左右とも: 2012年2月22日 ヒメネズミの足跡 白神自然観察園にて.

 ヒメネズミの頭胴長は6.5~10cmで,尾率(頭胴長に対する尾長の割合)は100%以上の非常に長い尾を持っています.ちなみにアカネズミは100%には達しません.この写真では尾を引きずった跡があり,アカネズミのfootprintsに似ていますが,歩幅が短く6~7cmくらいなので,ヒメネズミのものと思われます.

タヌキ

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写真左 2009年12月13日 タヌキの足跡 白神自然観察園にて.

写真中 2010年3月19日 タヌキの足跡 久渡寺山山麓の久渡寺境内にて.

写真右 2010年3月2日 タヌキの足跡 広泰寺前の広場にて.

 タヌキはキツネと同様に,前足・後足とも爪先立ちで歩く指行性歩行で,第2指~第5指の肉球(指球)と指のつけ根の肉球(掌球)計5つの肉球が寄りそい,丸い梅の花に似た形の足跡になります.タヌキの歩行跡は一直線にまっすぐ続くキツネの足跡と違って,ゆるくカーブするS字状になることが多いようです.

キツネ

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2010年1月19日 キツネの足跡 秋田県藤里町にて.

 写真左はキツネが歩いていてちょっと立ち止まったような足跡.写真右は2匹分のキツネの足跡のようです.指球や掌球,爪跡も見えます.

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2010年3月26日 キツネの足跡 広泰寺前の広場にて.

 キツネの足跡は並足の場合,前足のあとに後足が重なるのでほぼ一直線になるといいます.広場から奥のスギ林に向かって通り過ぎた後,ほんの少し雪が降ったようで,肉球や爪跡が見えませんが,一直線の歩行跡からキツネの足跡のように思われます.

二ホンリス

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2010年3月28日 二ホンリスの足跡 広泰寺杉並木参道にて. 

 広泰寺参道の杉並木には二ホンリスがたくさん生息しているようで,雪のある時季にこの参道を通ると,降雪や吹雪でない限り写真のようなリスの足跡をたくさん見ることが出来ます.写真右は跳躍歩行中の1回の着地分の前後肢の足跡.

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写真左右とも: 2010年3月2日 二ホンリスの足跡 白神自然観察園にて.

 二ホンリスは飛び跳ねながら進む跳躍歩行をします.早く進むときに飛び跳ねた後,左右の前足をそろえて着地し,その直後に前足跡の先に後足が着地するため,前足をかなめとする扇型の足跡が出来ます.

モモンガ

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写真左 2011年1月27日 モモンガの足跡 白神自然観察園にて.

写真右 2012年2月22日 モモンガの足跡 白神自然観察園にて.

 モモンガが雪面を歩いているところなんて見たことがないので,想像もつきませんでしたが,インターネットで紹介されていたモモンガの足跡が左の写真と瓜二つでしたので,モモンガの足跡ということにしておきます.

ノウサギ

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写真左 2010年3月17日 ノウサギの足跡 白神自然観察園にて.

写真右 2010年3月28日 ノウサギの足跡 白神自然観察園にて. 

 ノウサギの足跡は白神山地に限らず,積雪期の山に行くとよく目にするフィールドサインです.二ホンリスと同様,さきに着地した前足の先に後足が着地する跳躍歩行型で,進行方向に縦に並んだ2つの足跡が前足跡,その先に横に並んだ2つの足跡が後足跡です.したがって,写真ではどちらも手前から奥の方に向かっている足跡ということになります.

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2010年3月26日 ノウサギの足跡 白神自然観察園にて.

 この写真も手前から林の奥の方に向かっているノウサギの足跡です.スキー場でスキーリフトに乗っていてよく目にするお馴染みの光景.

弘前大学白神自然観察園

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2011年2月24日(写真上)・10月12日(写真下) 白神自然観察園中心部の尾根の上に建つ“不識の塔”からみた冬と秋の白神.

 写真中央あたりに広泰寺への杉並木参道があり,その左手に焦げ茶色の屋根が見えているのが弘前大学白神自然環境研究所(2009年開設)です.筆者は弘前大学を退職した2009年から2012年にかけ,この研究所をベースに観察園内および園外の白神山地をあちこち歩きまわり,このホームページで紹介している動物たちにめぐり逢うことができました.

イイズナ

二ホンイイズナの雪くぐり-その1

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2010年12月19日 二ホンイイズナの雪くぐり痕 大沢林道にて.

 この日,白神自然観察園に隣接する大沢林道でニホンイイズナの雪くぐりの跡を見つけました.イイズナは冬になると雪に潜って雪の下で活動しているネズミなどをとらえ,雪の表面に穴をあけて出てくる習性があります.写真は左端の林の方から歩いてきたイイズナが斜面のところで雪の中にもぐりこみ上に上がってきて雪の表面に抜け出て,右方向に跳躍して移動した跡です.

参考までに,岩木山麓高照神社の杉林で捕獲した換毛中のニホンイイズナの剥製写真(右下)をあげ

ておきます.

ニホンイイズナの雪くぐり-その2

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写真左 2010年2月20日 イイズナの雪くぐり 大川林道入り口付近にて.

 県道“白神ライン”の車道脇の除雪堆積に積もった雪の上のところをイイズナが横切ったようで,雪に潜ったり顔を出したり,雪の上に出て歩いたりしているのがよくわかります.

写真右 2011年2月6日 イイズナの足跡? 白神自然観察園にて.

 イイズナの体重はメスでほんの50g,オスで80~100gくらいしかありません.写真左の時とくらべ雪質が違うようですが,写真のように小さな足跡で尻尾を引きずった跡もないので,イイズナの足跡ぐらいしか思い浮かびません.観察園には体重が10g前後のジネズミやトガリネズミも生息しています.厳冬期に雪の上に出て来ることはめったにないのですが,この日は陽気に誘われ,雪面にでてきて足跡を残したという可能性もありそうです.

オコジョかな?イタチかな?

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写真左 2012年1月18日 オコジョの足跡か? 白神自然観察園にて.

写真右 2011年2月20日 オコジョの足跡か? 大川林道入口付近にて.

 左右両足がペアになって並んだ小さな足跡が繰り返し続いています.このようなパターンは足跡サイズを考慮すると,オコジョかイタチの足跡のようですが,歩行跡が浅いので,オコジョの可能性が高いでしょう.

二ホンテン

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写真左 2010年3月28日 二ホンテンの足跡 白神自然観察園にて.

写真右 2011年1月27日 二ホンテンの足跡 白神自然観察園にて.

 二ホンテンはイタチの仲間であり,歩行の基本パターンはオコジョや二ホンイタチと同じです.テンは体重が1.5kg前後もあり,100g前後のオコジョとくらべると格段に重く,その重さの違いは足跡にもはっきり表れ,深く沈んだ足跡になります.

ニホンカモシカ

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写真左 2010年2月28日 ニホンカモシカの足跡 大沢川林道 にて.

写真右 2010年3月13日 ニホンカモシカの足跡 白神自然観察園にて.

 ニホンカモシカはウシ科の仲間(偶蹄類)で,半月状の2つの蹄が向き合った形をとり,二ホンジカが生息していない地域であれば,見間違うことはありません.もう一つの特徴としては,蹄の後方に副蹄と呼ばれる突起の跡がみえるということです.写真右左ともこの福蹄の跡がはっきり見えているので,ニホンカモシカの足跡ですね.

ニホンザル

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2010年4月7日 ニホンザルの足跡 白神自然観察園にて.

 この写真で足跡の真ん中辺りから横に突き出ているのは後足の親指で,前足の跡は小さく親指跡はほとんど付きません.

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2010年2月21日 ニホンザルの足跡 芦沢(砂子瀬)にて.

 真ん中辺りの4個の足跡のうち,上2つが前足跡,下2つが後足跡です.

2010年2月21日 ニホンザルの足跡 芦沢(砂子瀬)にて.

 白神山地ではニホンザルの足跡はしばしば見かけます.霊長類だけあってヒトのものとよく似ていますが,後ろ足に関していえば人の手のように親指だけが他の指とは異なり横向きに開いて歩きます.前足(手)の親指の跡はあまり目立ちません.

キジorヤマドリの飛来着地と歩行のフィールドサイン

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2011年1月17日  キジかヤマドリの着地痕 白神自然観察園にて.

 広泰寺のスギ並木参道の近くで,キジでしょうかヤマドリでしょうか,右手前の方から飛来し雪面に着地し,そのまま木の間をぬって向こうへ歩いて行った跡を見つけました.着地した際,体が雪に沈んだ様子や左右に飛散した雪の跡がよくわかりますね(写真左).このすぐ近くに同様の着地痕がさらに2つありました(写真中央と右).3羽の鳥が一緒に飛来したようです.真ん中の写真では着地の際の雪の沈みが浅いので,幼鳥なのかもしれませんね.

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2011年1月17日 上掲の飛来着地の鳥3羽が参道脇の水路に沿って移動した歩行跡.

キジないしはヤマドリのラッセル痕か?

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2011年1月27日 キジかヤマドリのラッセル痕 白神自然観察園にて.

 雪深い厳冬期の観察園の急峻な沢で,斜面を横切る不思議な跡を見つけました.足跡がほとんど見えませんので,4足歩行の哺乳類ではないようです.写真のコントラストをあげて分析すると中型の鳥の羽跡を確認することができました.西目屋村のマタギ舎の工藤光治さんとオコジョの研究で知られる新潟県青海町の野柴木洋さんに写真を見てもらったところ,“ヤマドリかキジが柔らかい雪の斜面を移動したラッセル痕でしょう”ということでした.