白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
フィールドサイン – その②
フキの葉に描かれたエカキムシの不思議なアート
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年8月6日 ハモグリバエの幼虫がフキの葉上に残した食痕 津軽峠ブナ巨木ふれあいの径にて.
ハモグリバエ類の幼虫はナス科やウリ科・マメ科などの野菜類,リンゴやモモ・カキなどの果樹の葉 の内部にもぐって葉肉を食害し,あたかも絵を描くように白っぽいスジ状の食痕を残します.このよう な特異な採食生態からエカキムシとも言われ,栽培農家の人達からは農業害虫として嫌われています.
2010年5月29日 ヤドリバエの仲間 藤里町横倉にて.
一瞬ハモグリバエかと期待したのですが,ハモグリバエの仲間は1mmかそこらの微小なハエですから,まるで違います.元青森県郷土館の山内 智さんによると,ヤドリバエの仲間ということでした.
スギカミキリとその脱出孔
2010年6月6日 スギカミキリの成虫. 広泰寺杉並木参道にて.
カミキリ科の甲虫で,スギやヒノキ・サワラなどに寄生し,樹皮の割れ目などに産卵し,幼虫は樹皮の下の材を食害し甚大な被害を及ぼすので,林業者には嫌われているようです.幼虫は材の中で羽化し成虫のまま越冬し,春になってから一斉に脱出孔(写真下)から出てきます.
写真左 2010年5月18日 スギカ
ミキリの脱出孔.広泰寺杉並木参道にて.
写真右 2010年6月6日 スギカ
ミキリの成虫.広泰寺杉並木参道にて.上の写真と同じもの.
森のエビフライ
2010年8月21日 二ホンリスが食べ残した松笠(松ぼっくり)食痕 久渡寺山にて.
リスはアカマツやクロマツ・ドイツトウヒなどの松ぼっくりの種を好んで食べます.松ぼっくりはきれいに並んだ鱗片で被われており,鱗片と鱗片の間においしい種が入っているのです.リスは松ぼっくりを両手ではさんで固い鱗片を1枚ずつ食いちぎり,種にありつくのです.松笠の先端のあたりの鱗片は細長く種ができないようで,そのまま残り,球果の軸があたかもエビフライのようになります.森のエビフライとはよく言ったもので,まさにリスが手がけた芸術作品ですね.松ぼっくりの食痕はそこに二ホンリスが生息していることを示す格好のフィールドサインです.
アズマモグラのモグラ塚
2010年8月21日 アズマモグラのモグラ塚 久渡寺山にて.
久渡寺山の登山道の傍らでアズマモグラのもぐら塚を見つけました.モグラ塚はモグラが坑道を掘り進むときに土や芝を押し出し,こんもりと盛り上げたもので,このようにしっかりした出入り口を作ることはめったにありません.おそらくアカネズミやヒミズがこの坑道を利用し出入りしているのでしょう.
ヤチネズミの巣穴
2010年8月3日 ヤチネズミの巣穴 白神自然観察園にて.
ヤチネズミという名前から示唆されるように,ヤチネズミは谷地っぽい谷の底部や沢沿いなど水気の多いところを好むようで,彼らの巣穴は沢水の流れる岸辺の湿っぽい環境に多いようです.この写真はシシガシラが繁茂するやや湿気った谷筋の斜面にある巣穴で,試しにこの穴の前に生け捕り用のシャーマントラップを仕掛けたところ,予想どおりヤチネズミが捕れました.アカネズミやモグラの仲間であるヒミズなども利用しているようです.このような穴は無数にありますが,ネズミ類・ヒミズなどのフィールドサインとみなせるでしょう.
アカネズミとニホンリスのクルミ食痕
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2010年8月13日 アカネズミのクルミ食痕 大沢林道脇にて.
写真右 2010年8月18日 二ホンリスのクルミ食痕 白神自然観察園にて.
オニグルミが混生する森を歩くと,2つの穴が開いたクルミ(写真左)や縫合線に沿って半分に割れているクルミ(写真右)をしばしば目にします.前者はアカネズミがクルミに穴をあけて中の実を食べたもので,アカネズミ特有の食痕です.後者は二ホンリスの食痕で,鋭い前歯で縫合線に沿って割れ目を入れ半分に割って中の実(種)を食べたものです.
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年3月9日 広泰寺のスギ並木参道にて.
二ホンリスはオニグルミの実が大好物で,オニグルミの実を口にくわえスギの樹の上に作った巣に運び上げ,巣の上でクルミを割って種を食べるようで,スギの樹の根元にしばしば真ん中から半分に割れたクルミの殻が散らばって落ちていることがあります.アカネズミもオニグルミを食べますが,二ホンリスのようには2分できないので,縫合面のところを門歯でひたすら削って穴をあけ,中の実(種)をほじくり出して食べるのです.ほとんどの場合,縫合線上に2個,それぞれ反対側に穴が開いています.どのようにして穴をあけるのか,動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
この採食パターンは全国共通ですが,時には例外もあり,578個のクルミ食痕を調べたところ,27個は別なところに穴が開いていたり,穴が3個のものもありました.門歯に何か不具合がある個体が残したものでしょうか?参考までに下に挙げておきます.
2010年8月18日 アカネズミのオニグルミ貯食の跡 大沢林道脇のスギ・クリ林にて.
リスやアカネズミには豊富にあるドングリなどを一時的に隠し溜めしておき,食べるものが少なくなった時に掘り起こして食べる“貯食”という行動が知られていますが,アカネズミがオニグルミを貯食したという話は聞いたことがありません.2010年の夏,大沢林道の林でアカネズミの“オニグルミ貯食”を示唆する珍しい現場に遭遇したので撮っておきました.何かの資材置き場であった古い掘立小屋がこの年に撤去され,大量のクルミ食痕が露わになったものです.
2010年9月15日 オニグルミ貯食の現場 大沢林道沿い.
参考までに上の写真の貯食オニグルミが見つかった現場写真をあげておきます.右側に杉林,その外縁(左側)にオニグルミの林がみえます.この写真の手前真ん中あたりがその現場になります.
ニホンアナグマの仕業か?
2010年5月17日 二ホンアナグマの穴掘り跡 白神自然観察園にて.
白神自然観察園の緩やかな斜面に最近掘られたような穴を見つけました.珍しい植物の盗掘跡かとも思いましたが,たくさんの細かい根が切られずにのこっているので,これは盗掘ではなく,どうやらアナグマが巣穴を掘ろうとして,途中であきらめた穴のようです.
ニホンリスやモモンガは鳥の巣穴を利用する!
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2011年3月24日 白神自然観察園尾根にて.
写真左 ウスヒラタケ(?) のようなキノコが生えているミズナラの木に何かの巣穴があり,よくみるとスギの樹皮が詰め込まれていました.巣穴付近のキノコが少し踏みつぶされて潰されているようですので,どうやらこれは二ホンリスかモモンガが空き家となった小鳥の巣穴を利用して自分らの巣を作り始めたところのようです.
写真右 同じ木の上の方にも巣穴がありましたが,こちらは周囲のキノコがほとんど無傷のように見えるので,こちらはアカゲラかなにかキツツキの仲間が開けた穴を利用している小鳥の巣穴かもしれません.キツツキ類が開けた木の穴が小鳥やリス・モモンガなどの巣穴になっていることはよくあることです.
ムササビ・モモンガの排尿痕みつけた!
2011年1月17日 ムササビ・モモンガの排尿痕 広泰寺スギ並木参道にて.
冬の広泰寺参道を通ると,古木のスギの根元の雪がキムチの汁でもこぼしたかのようなオレンジっぽい色になっていました(写真左).野生動物どうしの闘争で流血でもしたのかな,それとも誰かヒト様が“立ちション”でもしたのかなとも思ったりしましたが,樹の周りの雪面には争いの形跡も人の足跡もなく,リスの足跡がいくつかあるだけでした.また,スギの幹の途中にもオレンジっぽい雪が若干ながら見えました(写真右).ムササビもモモンガも樹上の巣穴の中では排便排尿はしないとされていますので,これはどうやらこの樹に棲んでいるムササビかモモンガが木の上の巣穴から出て樹上から放尿したその排尿痕のようです.
ウスバカゲロウの幼虫巣穴 アリジゴク
2009年8月28日 アリジゴク 西目屋村大高森山の馬頭観音にて.
神社や仏閣の縁の下などでよく見かけるすり鉢状の穴.これはウスバカゲロウの幼虫が餌となる小さな虫を捕えるために砂含みの地面に作った巧妙なすり鉢罠なのです.この穴にアリやワラジムシなどが滑り落ちて来ると,とたんに中に潜んでいるウスバカゲロウの幼虫が頭を出し,その大きな顎でとらえ食餌する(体液を吸う)のです.アリジゴクの幼虫やその成体のウスバカゲロウまで見ている人はあまりいないようですので,参考までに久留米城趾大乗院稲荷神社の縁の下のアリジゴクで捕えた幼虫(大顎の先端から腹部末端まで 13mm)とその羽化成体(触角と翅も含め 40mm)を下に示します.
2019年8月5日 幼虫 2019年10月6日 羽化直後のウスバカゲロウ
大川渓流の岸辺の砂地に残されていた足跡痕
ニホンアナグマ
2011年9月16日 二ホンアナグマの足跡(Footprints) 大川渓流の岸辺にて.
大川渓流の川原へニホントカゲの動画を撮りに行き,その帰路,川岸のわずかな砂地で動物の足跡を見つけました.その大きさ,爪跡の数と並び具合,踵の痕などからすると,この足跡の主はニホンアナグマですね.往路ではこの足跡は見かけませんでしたので,通ったばかりのほやほやの足跡のようです.白神山地ではニホンアナグマは多いようで,林道に沿ってトコトコ逃げてゆくアナグマに出くわすこともあります.
ニホンテン
2011年9月16日 二ホンテンの足跡 大川渓流の川岸にて.
テンはイタチの仲間で,白神山地の渓流沿いでは川岸の砂地に残された足跡や川原の岩の上に残されたいわゆる“テンの高糞”などのフィールドサインをしばしば見つけることが出来ます.積雪が厚くなると肉球(指球・掌球)や爪の跡はほとんど見えなくなりますが,積雪がごく薄い場合や川岸などの適当に湿った砂地では肉球や爪の跡まではっきりわかります.
ニホンイタチ
2011年10月9日 二ホンイタチの足跡 大川渓流川沿いの砂地にて.
テンの足跡よりずっと小さく,指球と爪の後が連なり細長い爪跡のように見えます.
タヌキ
2009年6月20日 タヌキの足跡 大川渓流川沿いの砂地にて.
タヌキとキツネの足跡はよく似ていて識別が難しいのですが,個々の足跡でみると,タヌキの足跡はほぼまるい感じで,キツネは少し長めのひし形のように見えます.タヌキの場合は指跡(指球跡)や爪痕も見えることが多いようです.