フィールドサイン – その②

フキの葉に描かれたエカキムシの不思議なアート

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2010年8月6日 ハモグリバエの幼虫がフキの葉上に残した食痕 津軽峠ブナ巨木ふれあいの径にて. 

 ハモグリバエ類の幼虫はナス科やウリ科・マメ科などの野菜類,リンゴやモモ・カキなどの果樹の葉 の内部にもぐって葉肉を食害し,あたかも絵を描くように白っぽいスジ状の食痕を残します.このよう な特異な採食生態からエカキムシとも言われ,栽培農家の人達からは農業害虫として嫌われています.

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2010年5月29日 ヤドリバエの仲間 藤里町横倉にて.

 一瞬ハモグリバエかと期待したのですが,ハモグリバエの仲間は1mmかそこらの微小なハエですから,まるで違います.元青森県郷土館の山内 智さんによると,ヤドリバエの仲間ということでした.

スギカミキリとその脱出孔

2010年6月6日 スギカミキリの成虫. 広泰寺杉並木参道にて.

 カミキリ科の甲虫で,スギやヒノキ・サワラなどに寄生し,樹皮の割れ目などに産卵し,幼虫は樹皮の下の材を食害し甚大な被害を及ぼすので,林業者には嫌われているようです.幼虫は材の中で羽化し成虫のまま越冬し,春になってから一斉に脱出孔(写真下)から出てきます.

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写真左 2010年5月18日 スギカ

 ミキリの脱出孔.広泰寺杉並木参道にて.

写真右 2010年6月6日 スギカ

 ミキリの成虫.広泰寺杉並木参道にて.上の写真と同じもの.

森のエビフライ

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2010年8月21日 二ホンリスが食べ残した松笠(松ぼっくり)食痕 久渡寺山にて.

 リスはアカマツやクロマツ・ドイツトウヒなどの松ぼっくりの種を好んで食べます.松ぼっくりはきれいに並んだ鱗片で被われており,鱗片と鱗片の間においしい種が入っているのです.リスは松ぼっくりを両手ではさんで固い鱗片を1枚ずつ食いちぎり,種にありつくのです.松笠の先端のあたりの鱗片は細長く種ができないようで,そのまま残り,球果の軸があたかもエビフライのようになります.森のエビフライとはよく言ったもので,まさにリスが手がけた芸術作品ですね.松ぼっくりの食痕はそこに二ホンリスが生息していることを示す格好のフィールドサインです.

アズマモグラのモグラ塚

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2010年8月21日 アズマモグラのモグラ塚 久渡寺山にて.

 久渡寺山の登山道の傍らでアズマモグラのもぐら塚を見つけました.モグラ塚はモグラが坑道を掘り進むときに土や芝を押し出し,こんもりと盛り上げたもので,このようにしっかりした出入り口を作ることはめったにありません.おそらくアカネズミやヒミズがこの坑道を利用し出入りしているのでしょう.

ヤチネズミの巣穴

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2010年8月3日 ヤチネズミの巣穴 白神自然観察園にて.

 ヤチネズミという名前から示唆されるように,ヤチネズミは谷地っぽい谷の底部や沢沿いなど水気の多いところを好むようで,彼らの巣穴は沢水の流れる岸辺の湿っぽい環境に多いようです.この写真はシシガシラが繁茂するやや湿気った谷筋の斜面にある巣穴で,試しにこの穴の前に生け捕り用のシャーマントラップを仕掛けたところ,予想どおりヤチネズミが捕れました.アカネズミやモグラの仲間であるヒミズなども利用しているようです.このような穴は無数にありますが,ネズミ類・ヒミズなどのフィールドサインとみなせるでしょう.

アカネズミと二ホンリスのクルミ食痕

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写真左 2010年8月13日 アカネズミのクルミ食痕 大沢林道脇にて.

写真右 2010年8月18日 二ホンリスのクルミ食痕 白神自然観察園にて.

 オニグルミが混生する森を歩くと,2つの穴が開いたクルミ(写真左)や縫合線に沿って半分に割れているクルミ(写真右)をしばしば目にします.前者はアカネズミがクルミに穴をあけて中の実を食べたもので,アカネズミ特有の食痕です.後者は二ホンリスの食痕で,鋭い前歯で縫合線に沿って割れ目を入れ半分に割って中の実(種)を食べたものです.

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2010年3月9日 広泰寺のスギ並木参道にて.

 二ホンリスはオニグルミの実が大好物で,オニグルミの実を口にくわえスギの樹の上に作った巣に運び上げ,巣の上でクルミを割って種を食べるようで,スギの樹の根元にしばしば真ん中から半分に割れたクルミの殻が散らばって落ちていることがあります.アカネズミもオニグルミを食べますが,二ホンリスのようには2分できないので,縫合面のところを門歯でひたすら削って穴をあけ,中の実(種)をほじくり出して食べるのです.ほとんどの場合,縫合線上に2個,それぞれ反対側に穴が開いています.どのようにして穴をあけるのか,動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

 この採食パターンは全国共通ですが,時には例外もあり,578個のクルミ食痕を調べたところ,27個は別なところに穴が開いていたり,穴が3個のものもありました.門歯に何か不具合がある個体が残したものでしょうか?参考までに下に挙げておきます.

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2010年8月18日 アカネズミのオニグルミ貯食の跡 大沢林道脇のスギ・クリ林にて.

 リスやアカネズミには豊富にあるドングリなどを一時的に隠し溜めしておき,食べるものが少なくなった時に掘り起こして食べる“貯食”という行動が知られていますが,アカネズミがオニグルミを貯食したという話は聞いたことがありません.2010年の夏,大沢林道の林でアカネズミの“オニグルミ貯食”を示唆する珍しい現場に遭遇したので撮っておきました.何かの資材置き場であった古い掘立小屋がこの年に撤去され,大量のクルミ食痕が露わになったものです.

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2010年9月15日 オニグルミ貯食の現場 大沢林道沿い.

 参考までに上の写真の貯食オニグルミが見つかった現場写真をあげておきます.右側に杉林,その外縁(左側)にオニグルミの林がみえます.この写真の手前真ん中あたりがその現場になります.

二ホンアナグマの仕業か?

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2010年5月17日 二ホンアナグマの穴掘り跡 白神自然観察園にて.

 白神自然観察園の緩やかな斜面に最近掘られたような穴を見つけました.珍しい植物の盗掘跡かとも思いましたが,たくさんの細かい根が切られずにのこっているので,これは盗掘ではなく,どうやらアナグマが巣穴を掘ろうとして,途中であきらめた穴のようです.

二ホンリスやモモンガは鳥の巣穴を利用する!

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2011年3月24日 白神自然観察園尾根にて.

 写真左 ウスヒラタケ(?) のようなキノコが生えているミズナラの木に何かの巣穴があり,よくみるとスギの樹皮が詰め込まれていました.巣穴付近のキノコが少し踏みつぶされて潰されているようですので,どうやらこれは二ホンリスかモモンガが空き家となった小鳥の巣穴を利用して自分らの巣を作り始めたところのようです.

 写真右 同じ木の上の方にも巣穴がありましたが,こちらは周囲のキノコがほとんど無傷のように見えるので,こちらはアカゲラかなにかキツツキの仲間が開けた穴を利用している小鳥の巣穴かもしれません.キツツキ類が開けた木の穴が小鳥やリス・モモンガなどの巣穴になっていることはよくあることです. 

ムササビ・モモンガの排尿痕みつけた!

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2011年1月17日 ムササビ・モモンガの排尿痕 広泰寺スギ並木参道にて.

 冬の広泰寺参道を通ると,古木のスギの根元の雪がキムチの汁でもこぼしたかのようなオレンジっぽい色になっていました(写真左).野生動物どうしの闘争で流血でもしたのかな,それとも誰かヒト様が“立ちション”でもしたのかなとも思ったりしましたが,樹の周りの雪面には争いの形跡も人の足跡もなく,リスの足跡がいくつかあるだけでした.また,スギの幹の途中にもオレンジっぽい雪が若干ながら見えました(写真右).ムササビもモモンガも樹上の巣穴の中では排便排尿はしないとされていますので,これはどうやらこの樹に棲んでいるムササビかモモンガが木の上の巣穴から出て樹上から放尿したその排尿痕のようです.

ウスバカゲロウの幼虫巣穴​ アリジゴク

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2009年8月28日 アリジゴク 西目屋村大高森山の馬頭観音にて.

 神社や仏閣の縁の下などでよく見かけるすり鉢状の穴.これはウスバカゲロウの幼虫が餌となる小さな虫を捕えるために砂含みの地面に作った巧妙なすり鉢罠なのです.この穴にアリやワラジムシなどが滑り落ちて来ると,とたんに中に潜んでいるウスバカゲロウの幼虫が頭を出し,その大きな顎でとらえ食餌する(体液を吸う)のです.アリジゴクの幼虫やその成体のウスバカゲロウまで見ている人はあまりいないようですので,参考までに久留米城趾大乗院稲荷神社の縁の下のアリジゴクで捕えた幼虫(大顎の先端から腹部末端まで 13mm)とその羽化成体(触角と翅も含め 40mm)を下に示します.

    2019年8月5日 幼虫     2019年10月​6日 羽化直後のウスバカゲロウ   

大川渓流の岸辺の砂地に残されていた足跡痕

二ホンアナグマ

2011年9月16日 二ホンアナグマの足跡(Footprints) 大川渓流の岸辺にて.

 大川渓流の川原へニホントカゲの動画を撮りに行き,その帰路,川岸のわずかな砂地で動物の足跡を見つけました.その大きさ,爪跡の数と並び具合,踵の痕などからすると,この足跡の主はニホンアナグマですね.往路ではこの足跡は見かけませんでしたので,通ったばかりのほやほやの足跡のようです.白神山地ではニホンアナグマは多いようで,林道に沿ってトコトコ逃げてゆくアナグマに出くわすこともあります.

二ホンテン

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2011年9月16日 二ホンテンの足跡 大川渓流の川岸にて.

 テンはイタチの仲間で,白神山地の渓流沿いでは川岸の砂地に残された足跡や川原の岩の上に残されたいわゆる“テンの高糞”などのフィールドサインをしばしば見つけることが出来ます.積雪が厚くなると肉球(指球・掌球)や爪の跡はほとんど見えなくなりますが,積雪がごく薄い場合や川岸などの適当に湿った砂地では肉球や爪の跡まではっきりわかります.

二ホンイタチ

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2011年10月9日 二ホンイタチの足跡 大川渓流川沿いの砂地にて.

 テンの足跡よりずっと小さく,指球と爪の後が連なり細長い爪跡のように見えます.

タヌキ

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2009年6月20日 タヌキの足跡 大川渓流川沿いの砂地にて.

 タヌキとキツネの足跡はよく似ていて識別が難しいのですが,個々の足跡でみると,タヌキの足跡はほぼまるい感じで,キツネは少し長めのひし形のように見えます.タヌキの場合は指跡(指球跡)や爪痕も見えることが多いようです.

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