白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル
2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ
写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル
2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生
写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.
卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ
2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.
2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.
2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル
2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル
写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.
2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.
2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.
2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.
2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池
2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.
2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.
2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.
2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル
2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
白神山地・大川源流部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった獣と鳥たち
ニホンザルのペア 〜 至福のひと時
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年101月6日 ニホンザル 白神自然観察園にて。
弘前大学白神自然観察園の東側林縁でグルーミング中のニホンザルのペアに出あいました. 暖かな陽だまりの中で,横になってまどろみながらグルーミングしてもらっているボスザルの姿は微笑ましく,まさに至福のひと時を楽しんでいるようでした.
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
ボスザル: ついでに背中の方もやってもらおうか,なんだかムズムズするんや….
メスザル: えーよ.あらあら,こんなにいっぱい毛ジラミが!
しばらくしてもう一度振り返って見たら,今度はボスザルがグルーミングのお返しをしているようで,サルの世界にもお互いを慈しむ心があるんだなーと,ほのぼのとした気持ちでシャッターを押しました.
まもなく冬を迎えるニホンザルの親子
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年11月17日 ニホンザルの親子 観察園東側林縁の大沢林道にて.
両写真とも右が仔ザルで,2~3歳齢ぐらいでしょうか. 林道斜面の倒木に並んで座り,何を見ているのでしょうか? 親子とも真剣なまなざしで同じものを見ているようです. 親子同じスタイルで並んで座り,何か音が聞こえたのか,右へ左へと一緒に視線を移す姿は何とも可愛いです.
ニホンザルの仔ザル2景
写真左; 2009年8月30日 2~3歳齢の仔ザルか? 芦沢橋近辺で.
写真右; 2010年11月17日 そろそろ大人の仲間入りのころか? 大沢林道にて.
一般に仔ザルとは3歳あたりまでを言うようで,両頬が黒っぽく見えるのが仔ザルのようです.
時季まさに繁殖期まっただ中のニホンザルカップル
2010年10月7日 ニホンザルのカップル.大沢林道にて.
秋季9~11月はニホンザルの繁殖シーズン. ニホンザルは普段,顔もお尻も赤っぽいですが,この時季発情したサルは,オス・メスとも顔や尻が普段にも増していっそう鮮やかな赤色になります. 特にオスの睾丸は大きく赤く肥大化するので,容易に判断できます. 写真のカップルもこれらの特徴がよく出てますね.
二ホンジネズミ
2012年5月9日 二ホンジネズミ(剥製) 芦沢にて.
ジネズミはネズミの仲間ではなく,モグラやヒミズなどの食虫類の仲間です.この写真は観察園で捕獲したジネズミを剥製標本とし,芹沢の林であらためて撮影したものです.
カワネズミ
2003年9月4日 カワネズミ(剥製) 白神・相馬川源流部にて.
カワネズミは山地の渓流で生活しているトガリネズミの仲間で,ネズミという名がついていますが,ネズミの仲間ではありません.手足の指の間に列生する剛毛,水中で耳栓の働きをする耳介,水中を泳いでも体がぬれないような体毛など,渓流生活に適応した特性を持っています.カワネズミは渓流を自在に泳ぎながら水棲昆虫や渓流魚などをあさっています.白神山地では渓流の大小を問わずどの渓流にも生息しています.写真は相馬川源流部で捕獲したカワネズミを剥製にして,元の場所で撮影したものです.
カワネズミの姿を赤外線カメラでとらえる
2009年10月6日 秋の大川渓流 大川橋から300mほど上流にて.
渓流を遡行すると,水深が深く鏡のような水面のところや浅瀬のところが繰り返し現れます.このような渓流沿いでカワネズミが活動していますが,彼らは渓流にそそぐごく小さな支流にも結構入り込んでいます.
大川橋から上流150mほどのところに川幅1mにも満たない小さな支流があります(青線).2009年9月14日と18日,弘前大学情報処理センターの丹波澄雄先生と所属の学生さん達の協力で自家発電機を担ぎ上げていただき,この名もない支流の3カ所(ポイントA,B,C)に夜間撮影できる赤外線カメラを設置し,カワネズミの夜間行動の姿をとらえました.参考までにカメラの設置状況を下にあげておきます.
2009年9月14日 ポイントCの水辺を下るカワネズミ 赤外線動画からの1コマ.
ポイントAとポイントCの間の距離は30mほどで,映像の時間記録ではこの区間の通過所要時間は54秒(平均秒速56cm)でした.都留文科大学の北垣憲任教授のグループの福島県桧枝岐村での日中目視観察記録では,80mほどの谷川を下るのに7分ほどかかったとあります.平均秒速20cmですので,赤外カメラでの測定記録は2.5倍以上速い移動速度ということになります.動画で見る限り,一目散にまっすぐ下っているように見えるので,もしかしたら,カワネズミは赤外線の光を感知し,忌避行動していたのかもしれません.ポイントA,B, Cでのカワネズミの動きをとらえた赤外動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
ヒミズ
2012年5月31日 ヒミズ(剥製) 白神自然観察園にて.
地中生活に特化したモグラに近縁な日本固有種で,地中生活をメインとするが,地上にも頻繁に出てくる半地中棲の食虫類です.手の構造,特に爪の発達具合からもわかるように,モグラほどには地下適応していませんが,モグラと同様,眼球は皮下に埋もれ瞼(まぶた)はありません.この個体はシャーマントラップで捕獲し剥製標本にしたもので,捕獲した場所において改めて撮影したものです.
白神山地で初記録のミズラモグラ
2012年12月4日 ミズラモグラ(剥製) 白神自然観察園にて.
この写真は,白神自然環境研究所の中村剛之さんが観察園内の杉・カラマツ混交林の林床に設置した昆虫用トラップに落ちて水死していたミズラモグラを剥製にして,現場近くの斜面に体半分埋める形で撮ったものです.白神山地ではミズラモグラの記録は見当たらないので,初記録ということになります.
自動撮影カメラが捉えたアカネズミ
2011年11月2日 アカネズミ 白神自然観察園にて.
午後1時10分,観察園中腹の大きな木の根元に向けてセットした自動撮影カメラでとらえたアカネズミの採餌の写真です.根元には大きな空洞があり,動物によって踏みしめられたような形跡があります.正午頃,ピーナッツとアーモンドを餌にしてカメラをセットしたら,1時間くらいでアカネズミが現れたました.夜間も赤外で感知し100枚ほどの採餌シーンが撮れました.
午後7時5分,自動撮影カメラでとらえたアカネズミ.フラッシュの光が体側から当たっているためか,眼球が透けているように見えます.
午後11時13分,何か身の危険を察知したのか,飛び上がって樹の陰に隠れようとする瞬間をとらえたアカネズミ.
2011年9月10日 自動撮影カメラで捉えたアカネズミ 広泰寺裏にて.
広泰寺裏の片隅に何か獣によってかじられた穴があり,その穴の前にピーナッツなどの餌を置き,自動撮影カメラをセットして撮影したものです.この場所で撮影したアカネズミの採餌の動画も撮りましたので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
アカネズミのオニグルミ採餌
2010年6月12日 アカネズミ 白神自然観察園で捕獲.
このアカネズミは弘前大学農学生命科学部の白神学概論の現地訪問で捕獲したもので,大きな水槽に藁や草を敷きその中にオニグルミを置き,アカネズミがクルミに穴をあけ,中の種をたべるようすを撮影したものです.クルミの殻には縦方向に半分に割れる面に縫合線があり,小さな土手のように少し盛り上がっています.両手でしっかり押さえ,そのでっぱりに上顎門歯をひっかけ,下顎門歯で削り上げ穴をあけるようです.その一部始終を動画に撮ってありますので,詳しくは【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.また,アカネズミのオニグルミ食痕についてはフィールドサインのページで紹介します.
旧川原平部落の移転跡地で出くわした二ホンアナグマの老獣
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年5月16日 二ホンアナグマ(以下 アナグマ) 旧川原平にて.
川原平部落は,2016年の津軽ダム完成により,現在は津軽白神湖(通称,美山湖)に水没してしまいましたが,2010年には既に廃村となっていて住人はいませんでした. アナグマやニホンザルなどがわがもの顔に歩き回っていて,この日たまたま移転跡地の一角でアナグマの老獣にであいました.
ここに上げた4枚の写真は上の写真と同じ個体で,出会いがしら(写真上)こちらをひと睨み して,とことこ走り去るところ(上左より時計回りに)を写したものです.
二ホンアナグマの幼獣
2009年6月7日 二ホンアナグマ幼獣(左右とも) 大沢林道にて.
大沢林道から大沢川へおりる斜面の小道で,ヤブに潜んでこちらを窺がっているアナグマに気がつきました.まだ幼獣のようで,動きを止めお互いしばしお見合いしたのでした.左の写真には前足の大きな爪がみえますが,アナグマはこの頑丈な爪で林床に巣穴を掘ったり,ところかまわず林床を掘っくりかえし地中のえさをあさるようです.
もうすぐ冬眠に入るヤマネ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年10月19日 ヤマネ 白神自然観察園にて.
秋たけなわのこの日,広泰寺参道の大きなドイツトーヒの根元のあたりでヤマネがうろちょろしていました. 気温が低いためか動きが緩慢でした. そろそろ冬眠も近いようです. ひょいとつまんで近くの木の枝の上にのせたら,すぐに枝の下側の方へ隠れるように移動しました. ヤマネは天敵などにつかまらないように枝の下面を伝うように移動する習性があると言います。陽が落ちて暗くなりかけていたのですが,月の光がふりそそぎヤマネの背中の体毛が幻想的に輝いて,印象深いショットとなりました.
ノスリ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年2月28日 ノスリ 大沢林道にて.
タカの仲間で,白神山地ではふつうに見られる中型の猛禽類です.鷲のような大型の猛禽類と違い,おもに野ネズミなどの小動物を捕らえ食するとされ,いわゆる鷹狩りには使えないのだそうです.右の写真は左のノスリが飛び立った瞬間のもので,ノスリ特有の翼下面の紋様です.
美山湖の湖面から飛び立つカワアイサ
2010年4月17日 カワアイサ 美山湖(現在の津軽ダム湖・津軽白神湖)にて.
旧川原平のあたりで美山湖を眺めていたら,1羽の鳥が湖面を泳ぎ移動しているのが目に入り,とりあえず1枚と思いズームアップしシャッターを押しました(写真左).その何秒か後,いきなり湖面をけって走りだし,今まさに飛び立とうとしている情景となったのです.とっさに手にしていたカメラを向け2度目のシャッターを押しました(写真右).かなり距離があったのでピントが合ってませんが,CP画像にしてカワアイサだったことがわかりました.湖面に残る水上走の足跡紋,飛び立つ瞬間に両翼が水をかすめた翼波紋が印象深いです.
ホオジロ
2010年4月7日 ホオジロ(♂)? 川原平 焼山にて.
首をすぼめていて頬のあたりの特徴がはっきりしませんが,ホオジロのようです.
2010年7月15日 ホオジロ(♂) 東目屋にて.
顔の配色が特徴的な小鳥で,喉元と目の上の眉斑に加え,頬の部分も白であり,ホオジロの名はこれに由来するようです.
カワガラス
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2009年9月30日 カワガラス 大割沢川にて。
全身黒っぽい羽毛でおおわれているのが名前の由来ですが,カラスの仲間ではありません。白神山地では渓流沿いを歩けばどこでも頻繁に出あいます. 素潜りの名人で,水面上を泳ぎながら首を水中に入れて覗き込み,しばしば水に潜ってカゲロウ・カワゲラなどの幼虫,サワガニなどの甲殻類,さらには小魚まで捕食します. カワガラスの素潜り採餌を撮影した自動撮影動画も撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieで案内】をご覧ください.
カワラヒワ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年4月22日 カワラヒワ 白神自然観察園にて.
スズメの仲間で,大きさもスズメと同じくらい.カワラヒワの名は“河原周辺でくらす鶸(ひわ)”ということに由来するようです.
ロードキル
ロードキルとは,野生飼養を問わず動物が道路上で車やオートバイに衝突されあるいは轢かれ死んでしまう事象のことをいいます。ロードキルは一般公道や高速道にかぎらず,山中の林道などでも数多く報告されており,白神ラインをはじめ白神山地の奥地の林道でもタヌキやニホンカモシカ・ニホンザルなど多くの動物が犠牲になっています.本当に痛ましいことです.細心の注意を払って運転して欲しいものです.合掌.
左上より時計回りに
2010年9月9日 ジムグリ 白神ライン大川橋付近にて.
2011年7月3日 アナグマ 白神ライン津軽ダム展望台付近にて.
2011年7月3日 ノウサギ 白神ラインの大川橋付近にて.